CSV経営への共感を高める

編集部(以下色文字):優れた人材を組織に惹き付け、従業員にやりがいを感じてもらうため、パーパスが重要な要素の一つになっています。磯崎社長は、日本において、事業を通して経済的な価値と社会的な価値を同時に追求するCSV(creating shared value)経営を先導した経営者として知られていますが、どのような経緯で取り入れたのですか。

磯崎(以下略):キリンホールディングスのCSR(企業の社会的責任)担当役員として2010年にダボス会議(世界経済フォーラム)に出席した際、世界のトップ企業がCSVに積極的に取り組んでいることを知り、それ以来、関心を持っていました。経営の柱に据えようと考えたきっかけは、2011年の東日本大震災です。当時、危機管理担当役員として被災地を見て回り、従業員や地域社会のことを考える重要性を実感し、CSVの考えを導入しようと思ったのです。

 そしてキリンビールの社長に就任した2012年、CSVを提唱したハーバード大学のマイケル・ポーター教授[注1]に直接会いに行きました。夜にはハーバードスクエアで食事もしながら、詳しく話を伺い、やはりこれだと思いました。