従業員の要望を探るための4つのファクター

「大退職時代」(グレート・レジグネーション)と競争の極めて激しい労働市場を背景に、人材の獲得とつなぎ留めが雇用主にとって大きな課題となっている。これに対応するため、多くの雇用主はベーシックな戦略を採用している。すなわち、従業員に何がほしいのか要望を聞き、それを提供しようとしているのだ。

 この対応法はつい採用したくなるほどシンプルだが、落とし穴にもなりうる。従業員や求職者が真っ先に考える、目先の物理的な待遇ばかり重視しがちになるのだ。かつては給与が第一に考えられることが多かったが、昨今はフレキシビリティ(つまりは、リモートワークやハイブリッドワーク)が求められるようになっている。

 物理的な待遇は最も実行しやすい手段であり(賞与の支給は明日にでも決定可能だ)、即座に感謝されるが、一方で競合他社に模倣されやすく、従業員の離職防止効果はすぐに消える。物理的な待遇に頼りすぎれば、雇用主が人材獲得で他社に競り勝とうして「底辺への競争」(産業振興のための基準緩和や過熱したグローバル競争により労働環境や自然環境が最低水準に向かう)を招きかねない。