生成AIにどう備えるか

　創造性は、あらゆる企業のイノベーションや競争力を高める、非常に重要な前提条件となってきた。クリエイティビティビジネスが人間だけによって行われていたのは、それほど昔のことではない。だが、本稿で見てきたように、生成AIの登場により、そのすべてが変わろうとしている。

　新しい時代に備えるためには、その脅威と課題を理解しておく必要がある。何がどのように変わるのかを理解すれば、創造性が人間と機械のコラボレーションの産物になる未来に備えることができる。そこで、現代のクリエイティブ産業で、生成AIを導入してビジネス価値と利益を生み出す時、考慮に入れるべき3つの提言を示したい。

自分の仕事以外の領域でも破壊に備えよ

　生成AIは、情報の生産コストに、1439年の活版印刷の発明以来の大変革をもたらす可能性がある。15世紀以降の数百年は、知識や情報を得るためのコストが急激に下がったため、幅広い産業で急速なイノベーションや政治社会の変動、そして経済の混乱が生じた。現在は、生成AI革命のごく初期段階だ。したがって当面は、これまでよりも不安定な時期が到来するだろう。

自分の存在論に投資せよ

　これからの数十年は、自分の生み出した知識を体系化、デジタル化、構造化することが、重要な価値の推進力になるだろう。生成AIと大規模言語モデルにより、知識やスキルをチーム内や部門内で共有することが簡単になり、学習とイノベーションが加速するといえる。

AIに気軽に話しかけられるようになろう

　AIが知的探究のパートナーになるに従い、人間の知性の有効性と創造性は増強されるだろう。したがって知識労働者は、機械に仕事をさせるために最善の指示を出す方法を学ぶ必要がある。これはいますぐ始めたほうがいい。生成AIツールをあれこれ試して、プロンプトエンジニアリングのスキルを身につけよう。これは向こう10年間に、クリエイティブワーカーの必須スキルになる。

＊　＊　＊

　生成AIは、創造的な仕事の最大の破壊者となる。企業も世界も、私たちの生産性やコンテンツ制作レベルを迅速に高めるために、躊躇なくこの新しいテクノロジーを導入するだろう。したがって、生成AIが支配する世界で、創造性を極めるためには、多くの時間と労力をそそぐ覚悟が必要だ。

　同時に私たちは、これらの新しいテクノロジーが創造的な人間にとってどのような意味を持ち、アートやコンテンツにおける人間の真正性にどれだけ重要性を置きたいのか、真剣に考えなければならない。別の言い方をすると、生成AIが私たちの仕事の最前線で存在感を示した時、人間と創造性の関係はどうなるのか。アルバート・アインシュタインは、創造性とは知性の遊びだと言ったともいわれている。したがって創造的な仕事は、私たちの生活に意味や感動をもたらすものでもあるのだ。

　最終的に、創造的な仕事をどれだけAIに任せ、どれだけ人間に任せるかを決めるのは、企業と社会だ。そのバランスを見つけることが、私たちの日常的な仕事に生成AIを組み込む時、重要な課題になるだろう。

"How Generative AI Could Disrupt Creative Work," HBR.org, April 13, 2023.