黒人女性が職場で直面する毛髪による差別の実態
HBR Staff/Suad Kamardeen/Unsplash
サマリー:人種に基づく毛髪の差別に保護措置が取られている場所でも、黒人女性は毛髪に対する偏見をめぐって負担を強いられている。そこで本稿では、米国における毛髪に基づく差別の現状と、リーダーが組織内でそうした差別を... もっと見る軽減するための3つの戦略を解説する。 閉じる

毛髪に基づく差別と保護の実態

 アフロの髪は、世界中でステレオタイプ化され、スティグマ(負の烙印)を押されている。人種に基づく毛髪の差別に保護措置が取られている場所でも、黒人女性は毛髪に対する偏見をめぐって負担を強いられている。

 一部の地域では、職場や学校で多くの人が直面している毛髪の差別に対抗するための法律が制定されつつある。他の保護措置の先例となる米国の重要な法律が、生まれながらの髪を尊重し、受け入れる世界をつくることを目的とする「クラウン法」だ。この法律は、人種に基づく毛髪の偏見に対する保護策を講じ、髪質やブレイド、ツイスト、ロックなどのプロテクティブスタイル(髪を保護するためのスタイル)に基づく差別を禁止している。20州で採用されているが、連邦レベルでは毛髪の差別は禁止されていない。

 そこで本稿では、米国における毛髪に基づく差別の現状と、リーダーが組織内でそうした差別を軽減するための戦略を解説する。

職場での髪に対する偏見

 クラウン・ワークプレース・リサーチの2023年の調査によると、ここ数年で多少の進歩はあったものの、人種に基づく毛髪の差別は、働く黒人女性に対していまだに広く見られる問題だ。この調査は、2022年12月と2023年1月に、米国人の女性であることを自認する2990人を対象に行われた。回答者は、25~64歳のパートタイムまたはフルタイムの従業員で、黒人、ヒスパニック、白人、多人種・多民族の人々だ。以下がその結果である。

・黒人女性の髪は、プロフェッショナルらしくないと思われる可能性が2.5倍高い。
・黒人女性の半数以上が、就職面接では髪をストレートにしないと成功しないと感じていた。就職面接のために髪型を変えたことがあると3分の2が回答した。
・25~34歳の黒人女性の5分の1が、髪を理由に職場から帰されたことがある。
・黒人女性の4分の1は、髪が原因で仕事を拒否されたと考えている。

 2019年の同調査でも同じような結果が示され、黒人女性は他の女性と比べ、容姿を理由に厳しく判断されたと答えた確率が83%高かった。

 黒人女性は、ナチュラルなヘアスタイルだと職場で厳しいペナルティを受ける可能性があると認識することが多いが、社会的な規範に従うことに伴うリスクはますます大きくなっている。2015年のある研究では、黒人女性がよく使うヘアケア製品が、乳がんのリスクを高める可能性があることがわかった。広く使用されている「リラクサー」と呼ばれる縮毛矯正剤にも、有害な化学物質が含まれていることが判明し、2022年の研究では子宮がんを引き起こす可能性が示された。

 個人的な理由であれ、長期的な影響に対する当然の恐怖であれ、髪に化学的な矯正剤を使用しないことを選択した黒人女性は、偏見の可能性を最小限にするヘアスタイルの選択についても考えなければならない。たとえば、臨床心理学者のドナ・ドッカリーは、仕事用の写真撮影のためのヘアスタイル選びに苦労したと明かしている。

「仕事用の顔写真を撮るため、髪をどうするか考えるのに多くの時間を費やしました。ふだんはツイストアウトなどナチュラルなヘアスタイルにしていますが、広く使われるこの顔写真にそれがふさわしいかどうか、確信が持てなかったのです。選択肢は、自然のままにするか、ブレイドにするか、ストレートにするかでした。私が選んだのはボックスブレイドで、それをすっきりと束ねました。私にとってはそれが健全な妥協点でした。たいていの人は、何を着ようか、どのフォトグラファーにするかと考えるのでしょう。しかし私が最も時間を費やしたのは、髪をどうするかでした」

 テクスチュアリズムとは、より縮れて強くカールした髪質を持つ人々が直面する差別のことである。調査によると、髪質が白人や欧州人のものに近い従業員は、より硬く強くカールしたアフロの髪質を持つ従業員よりも優遇されていることが示されている。また、カタリストが最近行った、オーストラリア、カナダ、南アフリカ、英国、米国の社会から疎外された人種や民族の女性を対象にした調査では、職場でテクスチャリズムを経験したことがあると参加者らは答えた。