日本人のメンタルヘルスがコロナ後も改善しない背景
iStock.com/Max Bailen
サマリー:新型コロナウイルス感染症が第5類感染症へと移行して以来、日本も急速にかつての日常を取り戻しつつある。しかし、およそ3年間のコロナ禍がメンタルヘルスに与えた影響は計り知れない。本稿では、世界最大規模のファ... もっと見るーストパーティデータのプロバイダーであるダイネータのグローバル調査から見えてきた、日本人のメンタルヘルスの状況を他国と比較して紹介する。この結果から、日本人は他国と比較して、パンデミック以前よりもメンタルヘルスの悪化を訴える人が多いことがわかった。 閉じる

コロナ禍の3年間がメンタルヘルスに与えた影響

 2020年春頃からおよそ3年間にわたり、ニュースの主役だった新型コロナウイルス感染症。新型コロナが2類感染症から5類感染症へと移行した現在は、急速にパンデミック以前の日常が戻りつつあるが、この影響は計り知れないものがある。では、新型コロナウイルスとともに過ごした長い日々は、私たちの心にどのような影響を与えたのか。

 筆者の所属するファーストパーティデータのプロバイダーであるダイネータ(Dynata)は、2023年初めに日本、オーストラリア、中国、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダの16歳以上の消費者1万1000人を対象に調査を実施した。

 本稿では、調査の中からメンタルヘルスに関するインサイトを見ていく。この結果から、日本人は世界と比較して、パンデミック以前よりもメンタルヘルスが悪化していると回答する人が多いことがわかった。背景を探ってみると、メンタルヘルスを改善するための行動の違いが日本と他国の差を生んでいる可能性がある。

パンデミック前後で起きたメンタルヘルスの変化

 2019年(パンデミック前)と2023年(調査時点)とを比較してメンタルヘルスに変化はあるか、という質問に対し、世界の回答者の半数(51%)が「ほぼ同じ」と答えている。世界全体で見ると、自分たちのメンタルヘルスはパンデミック前よりも「改善した」(26%)という回答がある一方で、23%は「悪化している」と回答した。最も「改善した」という回答者が多いのは、中国(59%)、米国(34%)、カナダ(28%)の3カ国だった。反対に、「改善した」という回答者が少ないのが、日本(11%)、ドイツ(18%)、オーストラリア(21%)の3カ国だ。

 日本の回答者は、2019年と2023年とを比較してメンタルヘルスに変化はあるかという質問に対し、61%が「ほぼ同じ」という回答をしている。一方、メンタルヘルスが「改善した」という回答は、前述したようにわずか11%で、28%が自分たちのメンタルヘルスがパンデミック以前よりも「悪化している」と回答した。また、性別で比較すると、メンタルヘルスが「悪化している」と回答したのは、男性(25%)よりも女性(32%)のほうが多かった。

 日本の世代別の回答も見てみたい。メンタルヘルスが「悪化している」と感じている人は、X世代(41~57歳)で34%、次いでミレニアル世代(26~40歳)が29%、ベビーブーマー世代(58~76歳)が26%、Z世代(16~25歳)は24%となっている。また、パンデミック後にメンタルヘルスが「改善した」と回答しているのは、ミレニアル世代(26~40歳)が13%、X世代(41~57歳)が7%、ベビーブーマー世代(58~76歳)が6%と、若さとメンタルヘルスの改善には一定の相関関係があることが見えてきた。

 2019年と比較して、2023年のメンタルヘルスが「改善した」と回答している人たちは、いったいどのような方法で改善を図ったのか。圧倒的に多いのは、生活習慣が整ったことで改善したという回答だった。79%の回答者が、定期的な運動やよりよい食生活、より多くの睡眠時間を取るなど、生活習慣が整うことでメンタルヘルスが改善したという。