他人に自分の胸の内を話しづらく
セルフケアの意識が低い日本人
中国、英国、米国では過半数の人々が自分のメンタルヘルスについて「他人に気軽に話している」と回答している一方、日本では自分のメンタルヘルスについて他人に気軽に相談できるという人が3分の1未満(31%)だった。これは日本の文化において、メンタルヘルスについて語る人が少数派であるということを示している。フランスやドイツも日本と似た回答結果で、「気軽に話ができる」という人はそれぞれ32%、36%だった。
また、世界の 60% もの人々が、「家族や友人との緊密なつながり」が最も充実感を与えていると回答している。メンタルヘルスがパンデミック前よりも「改善した」という回答者が多かった国の回答を見てみると、中国は56%、米国は58%、カナダは60%と高い数値だった。
「趣味」も、調査対象国全体で最も充実感を与える要素として挙げられており、平均して 46% という結果だった。次いで、自分の心身のケアを行うこと、心と体のケアに時間を費やすことなど、一般的に自己の健康を自発的に維持する「セルフケア」は調査国全体の平均で33%に上った。先ほども挙げたメンタルヘルスがパンデミック前よりも改善しているという3カ国について見ていくと、中国は31%、米国33%、カナダは44%だった。
一方、日本人は、充実感を与えるものとして「趣味」と回答した人が最も多く、56%だった。世界的には最も多い回答だった「家族や友人との緊密なつながり」と回答した人は47%で、「趣味」に次ぐ結果となった。 「セルフケア」に充実感を与えられていると答えた日本人はわずか15%で、世界平均の33%を大きく下回り、調査対象国の中で最も低い回答となった。
また、パンデミック後にメンタルヘルスが悪化したという人に、「あなたの精神的健康の悪化に対して、次の各項目がどの程度重要な影響を与えましたか」という質問も行った。日本人の回答として多かったのは、「経済的な不安」(37%)と「身体の健康」(34%)で、次いで「世界的および国家的な問題に対する不安」(32%)、「仕事上の問題(仕事への不満、雇用の安全性への懸念など)」(31%)という回答が多かった。
こうした原因からメンタルヘルスの悪化が続いている日本人が改善を図るには、どのような行動が効果的だろうか。前述した充実感をもたらすものの中でも、世界の人々が実践している「家族や友人との緊密なつながり」や「セルフケア」は、メンタルヘルスがパンデミック前よりも改善したという中国、米国、カナダで行われている割合が高いことがわかっている。
こうしたことから「家族や友人との緊密なつながり」を大事にし、自分の心身のケアに時間を費やす「セルフケア」への意識を高めることは、日本人のメンタルヘルスを改善する一つの解決策になるのではないだろうか。