不安がもたらす悪影響

 ここだけの話だが、大成功を収めた人の中には、不安にさいなまれている人々がいる。最悪のシナリオを想像し、どれほど些細なことでも、うまくいかないかもしれないと心配する。失敗を引きずり、自分と他人と比較して劣っていると考える。ほめ言葉は聞き流し、ネガティブなフィードバックばかりを気にするのだ。

 このような不安は、行動や努力、そして物事を遂行する原動力になり、プラスに働く場合も多い。成功者が組織で高く評価されてきたのは、自分が最高の状態でなければ満足できず、周囲の期待以上に努力してきたからこそである。しかし、この状況を放置すれば、利点に見えるこれらのことが、その人を不幸にし、業績の低下やキャリアの停滞を招きかねない。

 マーク・ゴールドスタインという弁護士を例に挙げよう。彼は数年前まで、「自分が弁護過誤で訴えられる」といった恐ろしい状況を想像してばかりいた。また、常に自分を同僚と比較していた。「私の事務所には弁護士がおよそ1800人いますが、自分以外の1799人は、誰もが仕事や私生活のストレスにうまく対処していると思っていました」と振り返る。そして、みずからの力不足を補うため、自分が書いたメールに間違いがないか執拗に確認したり、休暇中も仕事をしたりしていた。