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企業活動の5つのプロセス
さて、冒頭から、読者の皆さんに質問です。
そもそも企業とは、いったい、普段どのような「活動」をしているのでしょうか。
この問いには、様々な答えがありえます。「商品・サービスを顧客に売っているんだよ」という答えも、その一つ。いや、「利潤を追求しているんだよ」という答えも、その一つです。
ここでは、企業の行っていることを最大限「簡略化」して、その「活動」を描き出してみましょう(図表1)。端的に言えば、企業は次の5つのプロセスを結合・関係づけて(=経営をする)社会に貢献しています。
1. 「市場」をさぐる
図表1に見るように、企業はまず「何をつくれば、どの程度、顧客に売れるのか」を把握するために「市場」をさぐります。あらゆる商品・サービスは、顧客に届いてこそ「価値」が発生します。よって、まずは市場を探索して、「顧客と顧客のニーズを知ること」が重要です。同時に、自社以外の「競合」する企業が「何をどのくらいつくって、どのように売上を上げているか」も調べます。
2. 「戦略」を立てる
企業は1の「市場をさぐる」活動によって、市場の様子、すなわち、顧客と競合他社を把握しました。次に、企業内部で立てられるのが「戦略」です。ここでいう「戦略」とは、「どのような商品・サービスを、どの程度、誰に、どのように届けるのか(売るのか)」を考えることです。こうした「戦略」なくして、企業は商品・サービスを自らの顧客に安定供給することはできません。
3. 「戦略」を「現場」が実行する
2で立てられた「戦略」を、「現場」(ライン)が実行していきます。戦略にもとづき、現場の生産ライン・営業ラインにいる管理職と従業員が、それぞれの現場で、商品・サービスを開発するべく行動します。ここで重要なのは、管理職や従業員が、戦略に沿った(アライン:同期した)行動を確実に遂行する、ということです。「戦略に沿った行動」なきところに、市場への商品・サービスの効果的展開はありません。後述しますが、人材開発・組織開発が最も貢献するのは、この部分です。
4. 「現場」が「商品・サービス」(付加価値)を「市場」に届ける
現場の営業ラインが、顧客と話し合いつつ、ニーズを聞き出し、「商品・サービス」(付加価値)をお届けします。ここでは、営業や物流などの部門が活躍します。
5. 提供した「商品・サービス」(付加価値)に対して「対価」を受け取る
顧客(市場)に届けた商品・サービスの付加価値によって、企業は「対価」を受け取ります。この対価こそが、次の企業の生産ラインを動かす原資となり、また、企業内部で働く人々の給与となります。
以上、企業の「活動」を5つのプロセスに単純化して捉えました。ここまで基本を把握したうえで、次に問いを進めていきましょう。企業が、このようなサイクルを回し続けるために、内部に保持していなくてはならないものは何でしょうか。
それは、いわゆる「ヒト・モノ・カネ」などの「経営資源」です。ここで、ヒトとは「人的資源」、モノとは「工場や研究施設などのファシリティ」や「原材料」、そして、カネとは「資金・財務」のことを思い浮かべてください。企業は、これらをうまく融通しながら、先ほど述べた企業活動の5ステップを循環させます。
どのような「経営資源」を企業が持つべきかは、業種・業態によって様々です。製造業ならば、工場や機械設備、店舗やOA機器が必要だ、という場合もありますし、原材料を仕入れることが必要だ、という場合もあるでしょう。IT業・コンサルティング業・サービス業ならば、必ずしも大規模な工場や機械設備は必要ない場合もあります。人間の持つ創意工夫こそが資源だ、という場合もあるでしょう。
ただ、どの業種・業態においても、程度の差こそはあれ、最も重要で欠かせないものがあります。それが「ヒト」という経営資源です。続いては、この「ヒト」という経営資源の特質について見ていきましょう。