上記のごく簡単な概要から、PSPのさまざまな組み合わせが異なる相互作用をすることがわかるだろう。たとえば、思想家と冒険家は互いの認知バイアスに対し、効果的に対抗できるかもしれないが、問題解決の進め方において摩擦が生じることもある。一方、ビジョナリーと刑事のチームは、一緒に仕事がしやすいかもしれないが、互いの弱点を増幅させることがある。ビジョナリーは、新しいアイデアを思いつくのは得意だが、そのアイデアを吟味するのに苦労する。刑事は、自分の仮定を検証するために多くの証拠を見つけるかもしれないが、データを手に入れると、他のステークホルダーを関与させずに前に進む傾向がある。

 エブリンと彼女のチームは、専門能力開発のワークショップを終えたばかりで、それぞれ自分のPSPを特定していた。エブリンは、自分が冒険家であり、アイデアにあふれ、常に先を読み、すぐに前進する用意ができていることを知っていた。一方、コスタリカに集まった面々のうちCFOは思想家であり、リテール部門のリーダーと新規事業開発チーフ、そしてコスタリカの事業責任者の3人は全員、傾聴者だったことを思い出した。思慮深く協働的なチームだったが、比較的スピードが遅く、さまざまな選択肢とその意味を探り、コンセンサス重視の決定に至る時間を必要としていた。

 エブリンが最初に発言し、自分が好ましいと思う決定を下してチームの確認を求めるというパターンにチームは陥っていた。冒険者は抵抗なく物事を始められる。彼女は、他のメンバーも冒険者のように、自分のスキルセットに基づいて素早く行動することを期待していた。しかし、チームがデータを掘り下げる必要のある状況に直面した時、エブリンは直感的な反応をした一方で、スピードは遅いものの秩序立った意思決定をするチーム内の思想家や傾倒者と対立することになった。

 エブリンは自分の行動を変えることにした。チームの協力する力を高めるために、最初に発言することを控えたのである。その結果、彼女が尋ねようとも思わなかった財務上の疑問が、チームから上がった。

 エブリンは、最初はいら立ち、チームに問題があると考えていた。時間をかけて問題解決者プロファイルの知識を利用することで、自身が感じていた緊張の原因を特定することができ、自分の意思決定アプローチが効果的な問題解決の障害になっていたことを認識した。そこで、問題に対する見方を変えることで、摩擦を減らし、チームメンバー全員が積極的に貢献できる方法で意思決定をできるようにした。最終的に、会社は新たな買収を進めず、コスタリカ支社の財務基盤をより強固にすることに集中することにした。

 エブリンは、冒険家の特性を買われてこの仕事に就いた。その特性は、物事を成し遂げる人物としての彼女の個性の一部だ。しかし彼女は、経営幹部チームが自分とまったく同じように行動すると期待するのをやめる必要があった。一歩引いて、チームの弱みではなく強みを見ることで、彼女はより効果的に会社を率いることができるようになった。

 多くのマネジャーが似たような課題に直面する。エブリンのようにリフレーミングすることで、チームも、仕事上の人間関係も、リーダーシップも改善することができる。PSPを使ってさまざまな意思決定パターンを理解することは、あなた自身の意思決定アプローチを知るだけでなく、チームの意思決定における多様なスタイルやダイナミクスを知るのにも役立つ。この基礎があれば、自分のアプローチを調整し、より効果的に他者と協力して、より良く、大きな決断を下すことができる。


"Are You Frustrated with Your Team's Ability to Solve Problems?" HBR.org, June 21, 2023.