3. 消費者にブランドコンテンツを自分のものと感じてもらう
これまでの世代と異なり、Z世代は自分の投稿をソーシャルネットワーク全体に「広める」ことはしない。「プライベートストーリー」を通して、少数の人々と頻繁に共有する。こうした投稿は頻度と親密度がともに高いため、エンゲージメントもはるかに高い。こうした変化に伴いZ世代は、幸せな瞬間をソーシャルメディアで広く発信したこれまでの世代とは違い、個人的な危機や悲しみといった、より生々しい瞬間をプライベートな仲間内で共有するようになっている。
アールがティックトックに投稿したGRWM動画で美容製品を見た若者が、スナップチャットのプライベートストーリーで友人たちにその製品をおすすめすることは、ブランドの力を入れるべき方向が知名度の高いソーシャルメディアから、非常に個人的な影響力を持つ存在へと移行していることを示す例だ。ブランドは、この重要な空間にアクセスする権利を獲得しつつ、こうした個人的に親密な場には不透明さと新たなリスクがあることも認識しておくべきである。
4. 抜きん出るために境界を越える
生成AIや会話型AIがクリエイティブな環境で大規模に適用される中、抜きん出るためには新たなインスピレーションの源と創造性が必要だ。すべてのインフルエンサーがリサーチを進め、アイデアを強化し、制作を加速させるために同じテクノロジーにアクセスできるようになったいま、先進的なブランドは、人間のオリジナリティや本当の評判を通じて差別化を図ることになるだろう。
真のクリエイティビティのハードルはいっそう高くなり、型にはまらないブランドの組み合わせや、消費者への新たな共創の呼びかけが必要となる。AIがアルゴリズムを動かすターゲティングとクリエイティブの両方を操作するにつれ、現在の「影響力」の定義は急速に変化するかもしれない。
5. クローン文化を避ける
マーケターは、消費を促す機会を何より重視していることだろう。インフルエンサーを通じて、圧倒的なスピードでトレンドを生み出すのだ。しかし、そこを極めすぎると、多様性と包摂性への取り組みと矛盾するトレンドが増幅していくエコーチェンバー現象をつくり出したり、特定の社会的な型の中で繰り返される行動をクローン化したりするおそれもある。
また、少なくとも見た目のオリジナリティに影響力が依存しているのであれば、誰もが似たAIによる知見を使うようになることで、差別化は難しくなるだろう。ブランドは、クリエイティビティとデータ(すなわち芸術と科学)の組み合わせを使って、商業的な目標を達成しようとするが、消費者とアイデアの基盤を多様化するには、戦略のいっそうの拡大が必要となるだろう。そうすることで、新しいオーディエンスや意見、インスピレーションを見つけられる。
クリエイターエコノミーは繁栄し、創造的で価値あるものとなっている。特にテクノロジーを活用した経済モデルは、優秀な人材に真のプロフェッショナルとしての活動を促している。この新しいダイナミクスを利用して価値を創造するブランドは、差別化を図り、飛躍的な成長を遂げるだろう。成功のカギは、リスクと見返りに関する最新の力学とともに、影響力の源を受け入れ、それを活用する努力を行うことだ。
HBR編注:本稿に示した見解は、筆者のものであり、アーンスト・アンド・ヤング(EY)およびEYのグローバル組織の他のメンバーの見解を必ずしも反映したものではない。
"How the Best Brand-Influencer Partnerships Reach Gen Z," HBR.org, June 21, 2023.