職場での「責任あるAI」の原則
AIの時代に、意思決定者が競争力を維持しつつ、マイナス影響を回避できるよう、筆者らは、AIを活用した持続可能な労働力のための原則をまとめた。この原則は、全米科学財団など諸機関の倫理的枠組みと、米国の電子通信プライバシー法(Electronic Communications Privacy Act)やカリフォルニア州プライバシー権法(California Privacy Rights Act)のような従業員の監視やデータプライバシーに関連した法的要件を融合させたものである。職場で「責任あるAI」を実践するためのステップは以下の通りである。
・インフォームド・コンセント:従業員にAIを活用した介入を行う際には、従業員にすべての関連情報を提供する。従業員は十分な情報に基づき、自発的に参加同意できる。関連情報とは、プログラムの目的、手順、潜在的なリスクとその利益などについてである。
・利害の一致:企業と従業員双方にとっての目標、リスク、利益を明示し、足並みを揃える。
・参加への同意と容易な離脱:従業員は、強制や強要なしにAIを活用したプログラムへの参加を選択できる。何ら不利益を被ることもなく、また理由を説明する必要もなく、いつでも容易にプログラムから離脱できる。
・会話の透明性:AIベースの会話エージェントを使用する際、そのエージェントシステムが対話を通じて従業員を説得する目的がある場合には、それを正式に明らかにしなければならない。
・偏りのない説明可能なAI:従業員に対するAIを活用した介入において、特に不利な立場に置かれた弱者グループに対する偏見を除去、最小化、緩和するために講じた措置の概略を明示し、AIシステムが決定や行動に至る過程について透明性のある説明を提供する。
・AI研修と能力開発:AIツールの安全かつ責任ある使用を確保するために、従業員の継続的な研修と能力開発を行う。
・健康と幸福:AIが誘発するストレス、不快感、または危害の種類を特定し、リスクを最小化するためのステップを明示する(従業員の行動をAIが常時監視することによって生じるストレスを、どのように最小化するのかなど)。
・データ収集:どのようなデータを収集するのか、データ収集にプライバシーの侵害または不快な手順がないか(在宅勤務におけるウェブカメラの使用など)、リスクを最小限に抑えるためにどのような手順を取るのかを明らかにする。
・データの共有:パーソナルデータを共有したい場合、誰と、なぜ共有するのかを開示する。
・プライバシーとセキュリティ:プライバシー保護、従業員データの安全な保管、およびプライバシー侵害が発生した場合の措置に関するプロトコルを明確にする。
・第三者による情報開示:AI資産の提供・維持に関わるすべての第三者、その役割、そして第三者が従業員のプライバシーをどのように保護するかを開示する。
・コミュニケーション:データ収集、データ管理、データ共有における変更、AI資産や第三者との関係に変更があれば従業員に知らせる。
・法規制:従業員データとAIの使用に関連するすべての法規制を現在そして今後も遵守することを表明する。
このチェックリストを早急に採用し、社内で展開すべきである。このような原則を適用することで、「責任あるAI」を迅速に展開できるだろう。
"13 Principles for Using AI Responsibly," HBR.org, June 30, 2023.