複数のテクニックを組み合わせる

 一度に使えるエンゲージメント・テクニックは1つだけとは限らない。いくつかを組み合わせて、その効果を高め、強化しよう。

 たとえば、アンケートは心と身体の両方を引き込み、3つの恩恵をもたらす素晴らしい方法だ。「XYZのうち最も重要な要素はどれだと思うか、手を挙げてください」といった簡単な質問でも効果がある。この1つの質問が引き起こす身体的、精神的、言語的なエンゲージメントの相乗効果によって、オーディエンスをニュートラルな状態から引っ張り出して、あなたのつくった場の流れに乗せることができる。

 なお、アンケートを取る時は、回答方法を最初に示す必要がある。「挙手で」や「チャットボックスに書いて」などと示すことだ。寄せられた回答に対してコメントすることも重要だ。たとえば、「思ったとおり、約半数が同様の回答でした」「なんと、全員同じですね」などだ。発表者がコメントしないと、オーディエンスは「だまされた」とか、「回答を気にもかけないとは、形だけのアンケートだったのか」と思うかもしれない。

 もちろん、こうしたアプローチがあなたの置かれた状況に適さない時もある。たとえば、目の前にいる3人のエグゼクティブの意見を聞く場合などがそうだ。したがって、状況とオーディエンスの規模に応じた方法を選ぼう。

 エンゲージメント・テクニックは、いつでも使えるものではあるが、会議やプレゼン、ピッチの冒頭で特に重要な役割を果たす。アクション映画のオープニングシーンを考えてみてほしい。あっと思うような、興味深くて、好奇心をくすぐるアクションシーンの真っ只中に放り込まれているはずだ。人々の注目と関心をがっちりつかんだうえで、初めてタイトルや監督名が表示される。

「こんにちは、私の名前は○○です」という伝統的なスタートの仕方では、冒頭で人々をエンゲージメントできる最高のチャンスを逃してしまう。自己紹介の前に、オーディエンスに質問を投げかけたり、アンケートを取ったり、ビデオを見せたり、アナロジーを使ったりして相手の心をつかむことで、エネルギッシュな雰囲気をつくることができる。

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 オーディエンスの集中をつかんで離さないことは、コミュニケーションを成功させるうえで決定的に重要なことである。説得力のあるコミュニケーションやコミュニケーターを思い浮かべてみると、本稿で説明したような身体的、精神的、言語的なエンゲージメント・テクニックをいくつか活用しているはずだ。

 あなたには重要なメッセージがある。だから、まずはオーディエンスの注目をつかみ、さらにそれを維持して、メッセージを伝える最高のチャンスをモノにしよう。


"3 Ways to Keep Your Audience Focused During a Presentation," HBR.org, July 28, 2023.