近視眼的なコスト削減が
組織の弱体化を招く

 経済の不確実性が高い時、多くのリーダーが昔ながらの手段に頼る。すなわち、コスト削減である。世の中の多くの物事が「自分たちにはコントロールできない」と感じられる時でも、コストはだいたいにおいてコントロール可能だ。

 しかし、短期的に利益を確保するという単一の目的だけのためにコストを削減するのは、近視眼的というものである。緊急の対応が必要か否かにかかわらず、リーダーは一つひとつの費用項目を事業における貴重な投資として見るべきであり、その費用を増やすか、減らすか、維持するかの決定が、会社の将来を左右すると認識すべきである。

 ダナハーはワシントンDCを本拠地とし、グローバルに多様な事業を展開するコングロマリットだ。同社はコストを投資として見て、成功を収めている。投資には、良いものもあれば悪いものもある。ダナハーはコストを削減しようとするのではなく、悪い投資を取り除き、良い投資はそのまま維持しようとする。来る日も来る日も、景気の良い時も悪い時もそうしているのである。