業界の危機に陥る中
投資に乗り出したアラスカ航空

 2020年の初め、パンデミックの影響によって航空業界は危機に陥り、米国系航空会社の乗客数は前年比で96%も落ち込んだ。この事態を受けてアラスカ航空は、同業他社の多くと同じように、財務の安定化を急いだ。採用の凍結、シニアマネジャー層の減給、ベンダーとの支払い条件の再交渉、自社株買いや配当支払いの保留、設備投資の削減を実施したのである。

 ただし、独自の取り組みにも乗り出した。競合が機体の発注をキャンセルするのを横目に、アラスカ航空のリーダー陣は、妙味のある価格で機体の若返りと拡充を図るとともに、エアバス製とボーイング製が混在する状態をボーイング製に一本化し、オペレーションを合理化する好機だととらえたのである。財務の健全性をめぐる自信を背景に、12月にはボーイング製68機の購入に合意したうえ、さらに52機分の購入選択権を確保した。

 米系の主要航空会社でこの年に航空機を大量購入したのはアラスカ航空のみだった。当時の社長で現CEOのベン・ミニクッシはこのように語る。