要求をビジョンと一致させる
あなたの要求を組織のビジョンやトップの戦略的目標と一致させることも、チームのニーズの妥当性と重要性を示すうえで効果がある。組織の方向性を深く理解していることを示し、あなたの要求がそれにどのように貢献するかを明確にしよう。そうすることで、組織の全体的なビジョンへのコミットメントを示し、あなたが戦略的に思考する人であるという事実を補強できる。
たとえば、あなたの会社が業界の思想的リーダーになることを目指しているならば、専任のリサーチアナリストを雇うなどして人員を増やすことによって、最新のトレンドを把握し、コンテンツをつくり出せると主張するとよい。その結果として、より著名なクライアントやパートナーシップ、スピーチや講演の機会を引き寄せ、組織の評判が上がるかもしれない。
ロンジャは上司が顧客体験を重視していることを知っていたので、新しいソフトウェアによって顧客のニーズや好みをよりよく理解し、より迅速に、よりパーソナライズされたサポートを提供できると主張した。
要求ではなく解決策を示す
エグゼクティブは忙しい。あらゆる問題を熟考するだけの時間や情報を持っているわけではない。あなたは自分の領域の専門家であり、エグゼクティブらはあなたが専門家らしく行動するのを期待している。スティーブ・ジョブズでさえ、このような名言を残している。「私たちが人を雇うのは、何をすべきかを教えてもらうためであり、その逆ではない」
上司に問題や要求を放り投げるのではなく、解決策を提示すれば、上司の意思決定の負担を軽減するだけではなく、問題の解決者というポジションに就くことができる。単に誰かに解決してもらうために問題を上層部に提示するのではなく、問題解決に向けて積極的に取り組むことになるのだ。
たとえば、「この仕事量をこなすには、さらにスタッフが必要です」という訴えは、「安い初任給で2人の初級スタイリストを雇い、時間をかけてスキルを磨かせれば、長期的には賢い投資になります」という提案に転換できるだろう。
意図を明確にする
あなたがリソースの追加を求める第一の動機が個人的な利益や都合ではなく、組織の成功であることを、上司に信じてもらう必要がある。「柔軟に対応する用意があります」とか「別の選択肢も喜んで検討します」などの言い方は、協力して折り合いをつける意志があるというサインになる。自分やチームを安売りしてはいけないが、ウイン・ウインの結果を探すことを目指そう。
ロンジャは、テクノロジーの大幅なグレードアップを求める最初の要求に対して上司が予算の制約から躊躇した場合は、技術スタックを少しずつ段階的に強化するという代案を提案するつもりだった。同様に、人員を増やすのではなく、既存のチームメンバーをクロストレーニングする、あるいはほかの重要性の低い分野から人を派遣してもらうという提案もできる。
過去の成功例を示す
証拠には力がある。過去のパフォーマンスは、しばしば未来の成功の指標になる。過去の成功例を示すことで、あなたには結果を出す能力があるという信頼を築くことができる。かつてあなたがリソースの追加を要求して、好ましい成果を上げたという実例を強調しよう。
数年前、ロンジャはCRM(顧客関係管理)システムを導入する資金を要求し、その後、売上げは半年で15%増加した。ロンジャは新しい取り組みのための予算を上司に要求する際、この話を利用することにした。後で彼女から聞いたところによると、上司は「いまは資金が潤沢なわけではないが、あなたは与えられたものをすべて最大限に活用できることがわかった」と言ったという。
策を打たないことによるコストを強調する
何もしないことの代価や影響を率直に伝えよう。「もしXYZに投資しないなら、将来、このような好ましくない影響が出ます」などの形で伝えるのだ。意思決定における最も強力なバイアスの一つは損失回避である。事実、研究によると、損失は同額の利益に比べて2倍のインパクトを与えるという。
何が危うくなるかを強調することが脅しになってはいけない。むしろ、上層部の決定が及ぼす影響がいかに広範かを理解してもらうために利用すべきである。あなたが状況を深く考察し、背景を理解し、組織の最善の利益のために先回りして気を配っていることを上層部に示すのだ。
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リソースを求めて主張するという行為の持つ意味は、さらなるツールや人員、資金を獲得するために「イエス」という返事を得ることだけに留まらない。それはチームの成功に対する深いコミットメントを表すものでもある。
またチームメンバーに対しては、チームの大変さをあなたが理解し、努力を高く評価し、ニーズのために戦っていることを示せる。そして、より多くのリソースを自由に使えるようになれば、あなたのチームはより効率的に仕事をし、イノベーションのために効果的に取り組み、質の高い成果を上げて、組織の収益に直接的に貢献できるだろう。
"Making the Case for the Resources Your Team Needs," HBR.org, August 15, 2023.