偉大なイノベーターは独創的なアイデアなど生み出していない
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サマリー:企業がイノベーションを起こせないのはなぜだろうか。本稿では、イノベーションを起こすための考え方を提示する。それはすなわち、大きな問題を分解し、制約と選択肢を明らかにしたうえで、それらの組み合わせにより... もっと見る解決策を導き出すものだ。この「選択の科学」を取り入れることで、より革新的な解決策が生まれる。 閉じる

なぜ企業はイノベーションを起こせないのか

 歴史を振り返ると、画期的な発明は、天才的なひらめきや神の介入によるものだと思いたくなるが、真実はもっと平凡なものだ。バスケットボールの発明であれ、企業向けの学習やイノベーションの支援システムであれ、人間の偉大な頭脳は、巧みな「選択」によって、ひらめきに至っている。つまり、「大きな問題」は何かを見極め、それを下位問題に分解し、個々の下位問題が以前どのように解決されたかを探り、複数の選択肢の中から独創的な組み合わせを見つけて、画期的な解決策を導き出していたのである。

 筆者は、この方法を「Think Bigger」メソッドと呼んでいる。この手法をコロンビア大学ビジネススクールで学生に教え始めたが、すぐに教室外でも大いに役立てられることに気づいた。たとえば、イノベーション委員会などを設置している組織は、設置していない組織よりも高いパフォーマンスを実現していることが調査によって示されている。

 しかし、このような結果は保証されているわけではなく、積極的な取り組みを進めている企業でさえも、イノベーションが実際にどのように起こるかに関する社会全体の理解不足のせいで、手にできるはずの収益を取りこぼしていると筆者は考えている。研究によれば、「選択の科学」をプロセスに導入することによって、世界を変えるような解決策をさらに生み出せるはずである。

制約の力

 社会心理学者たちは、1990年代後半にはすでにある驚くべき事実に気づいていた。それは、ある選択を行った人の満足度を最大化するためには、選択肢を無制限に与えてはならない、ということである。筆者らが示したように、選択肢は与えるべきだが、明確な制約とともに与えるべきなのである。自信を持って望ましい選択を行うためには、このような付加的な構造が極めて重要なのだ。