
新入社員のメンタルヘルスを支える方法
新たに職場に加わる新人にとって、メンタルヘルスは単なる優先項目ではなく、必要不可欠なものだ。
新卒者および卒業予定の学生の92%が、職場でメンタルヘルスについて話しやすい雰囲気があることが重要だと考えている。また、メンタルヘルスの福利厚生が充実している職場があれば移りたいと答えた人は61%、ワークライフバランスが保たれていない仕事のオファーを断るとした人は54%に上る。
日々の仕事で多大な負荷を抱える新入社員が、さらにメンタルヘルスや福利厚生の仕組みまで理解するのは、控えめに言っても大変なことだ。
一方、雇用主側からすれば、メンタルヘルス支援の市場は給付金や商品、特典、一まとめにしにくいサービスなどであふれており、ましてや多様化する労働者の状況に合わせてそれらを調整するのは困難極まりない。その結果、提供内容が不明瞭だったり、不足したりする事態が生じ、新入社員は迷い、意欲を失い、新たな機会を探すことになる。
では、新入社員のメンタルヘルスを有意義な形で支えるにはどうすればよいのか。効果的な方策とはどのようなものだろうか。筆者らは多様なグローバル企業と協働する中で、リーダーが新入社員の価値観や課題、動機付けに応じて、十分な情報に基づいた革新的な戦略を講じることが重要だと気づいた。以下にその方法を紹介しよう。
新入社員を取り巻く状況の進化を理解する
職場に新たに加わる人といえば通常、若者や新卒者を思い浮かべるが、すでに就労しており、新たなタイプの雇用形態に転じる人もこのグループに含まれる。現場の仕事からオフィスワークに移るケース、ギグワーカーが給与所得者に転じるケース、無給のケア労働から正規の雇用に切り替えるケースなどだ。これらの人々がどのように異なるかについてリーダーが理解を深めることで、彼らを支援するためのより効果的な戦略の立案につながる。
新入社員の多くは、年齢に関係なく、キャリアステージによって共通の課題を抱えている。たとえば、新たな組織の労働文化に適応する必要性(学生から社会人へ、あるいは新しい雇用形態への適応など)、社会的支援ネットワークの喪失や変化(仕事のために転居した場合など)、そして成功を収めてキャリアの成長を加速させなければならないというプレッシャーなどの課題である。
総合的に見れば、こうした課題は仕事の構造への適応を反映したものであり、明瞭で効果的なオンボーディングやリソース提供、コネクションの構築を通して解決することができる。
また、世代特有の課題もある。Z世代の労働者の場合、より広範な社会的変化──多様性の拡大、生活コストの高騰、住宅取得可能性の低下、仕事や日常生活におけるテクノロジーの融合、さらには銃暴力、生殖に関する権利を中心的な価値観に据えるリプロダクティブ・ジャスティス、気候変動、LGBTQ+の権利など、社会問題への意識の高まり──の影響を受けて、彼らの欲求やニーズが変化している。Z世代はまた、パンデミックによる社会的な関係性を発展させる機会の喪失、ハイブリッドワークなどの新たな労働規範など、前例のない課題にも直面している。
若き労働者たちは、メンタルヘルスへの意識とリテラシーが高く、それらをオープンに語る意識も強い。また、職場でのメンタルヘルスのサポートについて雇用主に求める期待も大きい。こうした要素はすべて、変わりゆく世界の実情を反映している。