成績評価ではなく改善を目標にする
企業は、顧客フィードバックを利用して従業員の成績を評価する。だから私たち顧客は、サービス担当者から「5点満点の5点をください」と懇願されることになる。おかげで、せっかく快適だった顧客エクスペリエンスが、気まずい終わりを迎えることになる。これは従業員のせいではなく、使われているシステムのせいだ。
そこで、フィードバックを求める質問を工夫して、組織が求めているのは、「うまくいっている」と言われることではなく、自己改善であることを明確にしよう。つまり、「いかがでしたか」と聞くのではなく、「もう少し改善されたらよいと思ったことを一つ挙げてください」と質問しよう。
よりよいエクスペリエンスの旅に、顧客を招き入れるのだ。顧客によっては、大まかな質問ではアイデアが浮かばないこともある。その時は2つ目、3つ目の質問をして、よりよいフィードバックを引き出す訓練を従業員にする必要があるかもしれない。そのための訓練は、取り組む価値がある。
顧客の言葉よりも行動に注目する
前述のように顧客は、よほど状況が悪いか、やり取りが適切な方向に位置づけられていない限り、自分の考えや気持ちを教えたがらない。
したがって、誤解をもたらしかねない「感情」を調べるのではなく、顧客の行動を追跡し、観察しよう。どのくらいの頻度で再購入するか。あなたの店やサイトを訪れる頻度はどのくらいか、訪問時に何をするか。レストランの場合なら、どの料理に食べ残しが多く、どの料理が完食されているか。
このように「行動のフィードバック」を体系的に把握するためには、大規模な顧客グループを追跡してパターンを発見するデータ分析だけでなく、現場の従業員による非統計的な観察も十分に行う必要がある。不満を示すような客の行動に気づいていないだろうか。たとえば、コーヒースタンドの従業員は、客がカップを持ち上げる時、紙ナプキンを使うのを見ているかもしれない。これはカップが熱すぎるという意味ではないか。顧客の行動データと観察を組み合わせると、オペレーションの質を継続的に向上させるアイデアを生み出せる。
定期的な介入ではなく習慣にする
前述のように、サービスの問題は時間が経つと悪化し、顧客が無言で去っていく原因になる。この場合の予防措置は治癒だ。半年とか3カ月に一度アンケート調査をするのをやめて、継続的で企業文化の一部となる仕組みをつくろう。
最後に、さらに上のレベルを目指すなら、実験とフィードバックを組み合わせよう。小さな変更を加えて、フィードバックを集めてみるのだ。あるいは、小さな領域で大きな変更をして、顧客の反応を見る。実験をして、顧客を観察し、率直な意見を求めることこそ、オペレーションを継続的に改善するメカニズムだ。そしてフィードバックは、プレゼントであり、必要不可欠なものだと考えよう。
フィードバックは、貴重な情報であると同時に顧客からの指摘だと考えると、顧客のニーズや嗜好に応える、活気に満ち、適応力を備えたビジネス環境を育むことができる。純粋で有意義なフィードバックのループを確立すれば、オペレーションのレベルを大きく引き上げることができる。フィードバックを奨励するとともに、顧客は承認を与えてくれる相手ではなく、プロダクトの改良を手伝ってくれるパートナーと見なす文化の創造は、役に立たない既存のフィードバックシステムを再考する重要なアプローチになるはずだ。
"How to Get Honest and Substantive Feedback from Your Customers," HBR.org, September 15, 2023.