(6)ほかの解決すべき問題が次々と列挙される
このような反応の前提には、その会社が受け入れることのできるポジティブな変化に一定の限界があるという発想がある。そして、自社が現在すでにその上限に達しつつあると言いたいのだ。人々は往々にして、自社が好ましい変化を遂げる能力を過小評価する傾向がある(また同様に、変わらないことの本当の代償も過小評価する場合が多い)。しかし、あなたが掘り起こした問題は、フラストレーションや標準的な水準を下回っている状況、また一部の組織においては真に深刻な現状を映し出すものであり、迅速に対処すべきである。
(7)将来もっと好ましいタイミングが訪れると言われる
これは、最もよく見られる抵抗のパターンかもしれない。将来、より変革を推し進めやすい状況が整うはずだという幻想を抱く人が非常に多いのだ。しかし、筆者らの経験から言うと、そのようなケースはほとんどない。たいていはその逆だ。いま問題が明確になっていて変革への機運が盛り上がりつつあることは、変革を推進するうえで途方もなく大きな武器である。しかし、その武器は永遠に有効なわけではない。ほとんどの場合、成功をもたらすのは「目下の猛烈な緊急性」だ。とくに、周囲の人々の成功とウェルビーイングがかかっている場合はその傾向が強い。
(8)行動を起こすタイミングが延びている
これもよくある先延ばしのための戦術で、上述の(6)(7)で示した懸念に対してよく使われている。変化が必要だという指摘は、抽象レベルでは受け入れられているものの、いつまで経っても実際に変革を起こせず、行動を起こすタイミングが曖昧にされているのだ。こうした反応は、あなたの会社の存続を危うくする脅威と考えたほうがよい。自社の運命を左右するような問題に取り組むのに最適な時期は、いまこの瞬間以外にない。
(9)時間を稼げば、やり過ごせると思われている
経営学者のアール・サッサーは、このタイプの反応を「腎臓結石型マネジメント」と呼んでいる。これは、そのままにしておいてもいずれ自然に石が出てくる場合が多い腎臓結石と同じように、問題解決も放っておけばやり過ごせるだろうと期待する発想である。このような反応を示された場合は、できれば笑顔で、あなたが引き下がることは決してないとはっきり示そう。あなたがマネジャーの地位にない場合は、マネジャーが好むようなやり方で、コーヒーを片手に毎朝そのマネジャーの部屋を訪ねて、変革の必要性を訴えればよい。あなたのメッセージが伝わるまでそれを続けるのだ。筆者らの場合、この方法でうまくいかなかったことはない。
(10)「そのやり方はうまくいかなかった」と言われる
あなたの会社では過去に、あなたが指摘しているのと同様の変革を起こそうとしてうまくいかず、不満と冷笑だけが残った経験があるのかもしれない。もしそうであれば、しっかり準備して、過去にうまくいかなかった点から学ぶべきだ。しかし、状況が常に変化していることも忘れてはならない。そもそも、あなたが変革を主導する意欲を抱いているという要素は、これまでにはなかったものだ。過去の取り組みにはあなたが関わっておらず、それが大きな違いを生むだろう。
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本稿は、2人の近著Move Fast and Fix Thingsからの抜粋に編集を加えたものである。また、ここで挙げたリストは、フライとモリスの共著Unleashed: The Unapologetic Leader’s Guide to Empowering Everyone Around You(邦訳『世界最高のリーダーシップ』)の内容を修正したものである。
"10 Signs Your Company Is Resistant to Change," HBR.org, September 26, 2023.