人にどう思われているかを知るには、対面とビデオ会議のどちらがよいか
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サマリー:新しい同僚が自分についてどう感じたかを知りたい場合、対面での会議とビデオ会議、どちらがよいだろうか。その答えは、あなたの対人関係に対する不安感がどれくらい大きいかに依存する。ビデオ会議は、対人関係が苦... もっと見る手な人にとって、伝えたい印象を適切に管理する平等な機会を提供する可能性があり、これはチームリーダー、メンバーの両方にとって重要な意味を持つものである。 閉じる

最初の印象があなたの評判を左右する

 あなたは、新しい職場で働き始めたばかり。職場での自分の評判が気になって仕方がないのではないか。新しい同僚たちは、自分にどのような印象を抱いているだろうか。同僚たちは、自分のことを聡明でフレンドリーだと思ってくれているだろうか。誰でも、自分がほかの人たちにどう思われているかは気になるものである。

 こうした点がそれほどまでに気になるのは、それが印象マネジメントの出発点だからだ。たとえば、新しい職場の最初のプロジェクトミーティングで無能だと思われてしまったとわかれば、それをきっかけに、その誤解を解くために動き始めることができる。具体的には、自分しか持っていないスキルが目下のプロジェクトにとっていかに有益かを強調してもよいだろう。

 ところが、自分が無能だと思われていると知る手がかりがなければ、同僚たちの自分に対する印象をマネジメントできないままになりかねない。そして、やがて気がついたときには、職場でのネガティブな評判がすっかり固まってしまっている可能性がある。つまりは、自分がまわりの人たちに与えている印象を知ることは、職業上・社交上の対人関係をうまくやっていくうえで欠かせないステップなのだ。

 いま私たちは、ハイブリッドワークの世界に生きている。この時代には、職場の同僚たちとのやり取りは、対面だけでなく、ビデオ会議で行われるケースも同じくらい多くなっている。同僚と直接会って話すか、バーチャルで話すかを選択できるケースもあるだろう。

 そこで、筆者らの研究では次のような問いを解明しようとした。新しい同僚が自分のことを本音レベルでどう思っているのかを知りたい場合、対面とビデオ会議のどちらのコミュニケーション方法を選ぶべきか。どちらの方法を用いたほうが、相手の感じていることを正確に把握できるのか。

研究の内容

 筆者らが実施した研究では、対面とビデオ会議のどちらが優れているかを明らかにするために、新型コロナのパンデミック前に305人を(4~8人のグループごとに)ラボに招き、さらにパンデミックの間に555人を(3~9人のグループごとに)ズームのビデオ会議に招いた。実験参加者たちは、ビジネス上の名刺交換イベントのような要領で、初対面の人たちと2分間だけ一対一で話す。すべて合わせると、対面でのやり取りが計1683組、ビデオ会議でのやり取りが計3068組で行われた。

 それぞれの会話のあと、相手の性格をどのように感じたかを実験参加者たちに報告させた。たとえば、「この人物をどれくらい聡明だと思いましたか」などと尋ねた。ここで重要なのは、相手の印象を尋ねるだけでなく、相手が自分のことをどのように評価していると思うかも尋ねたことだ。「この人物は、私のことをどのくらい聡明だと思っているのだろうか」と考えさせたのである。

 すると、わずか2分間会話しただけでも、人々は自分が相手にどう思われているかをかなり正確に言い当てられることがわかった。しかも、自分が相手に与える第一印象の推測は、ズームで話した場合も直接対面して話した場合と同じくらい正確だった。いずれの場合も、相手が自分のことをどれくらい聡明だと思っているか、どれくらいフレンドリーでないと思っているかをかなりの精度で判断できたのである。言い換えれば、筆者らの研究によると、人々が自分に対する他人の評価を察知する能力は、ビデオ会議システムを通じてやり取りする場合にも損なわれないのだ。

 さらに、自分が与えている印象を把握できていることと、ほかの人たちから好かれていることの間の関連性の強さは、ズームでやり取りする場合も直接対面して話す場合と変わらなかった。つまり、自分が相手にどう思われているかを認識できることは、対面で話す場合と同様、ズーム上でのやり取りでもメリットがある。ズームで自分が他人に与えている印象を知ることは、対面の場合と同じ効果があり、同じ恩恵をもたらすと言えそうだ。

 では、こうした研究結果は、次に新しい同僚と話すときにどのような意味を持つのだろうか。私たちはしばしば、ズームを利用して話すことには慎重であるべきだというイメージを抱いている。しかし、そうした素朴な印象とは逆に、少なくとも印象マネジメントに関して言えば、対面ではなくビデオ会議で話しても、ほとんどの人の場合、それほど大きな違いはないのかもしれない。しかし、これはすべての人に当てはまることなのか。