研究によると、対人関係に苦手意識がある人は、対面よりもオンラインのほうが居心地よく感じることが多い。そのような人たちは、ズームで話すほうが不安を感じにくく、その結果として、自分が相手にどのような印象を与えているかを正しく判断しやすい。

 実際、対面で話すイベントにおいて、対人関係に苦手意識がある人は、そうでない人に比べて、自分が相手に与えている印象を正しく判断できない傾向があった。一方、ズームにおいてはこのような弱点は見られなかった。対人関係への苦手意識が強い人も、苦手意識があまりない人と同じくらい、自分が相手に与えている印象を正しく認識できていたのである。

 このような現象は、ズームの使用によって対人関係に苦手意識のある人たちが後押しされ、苦手意識のない人たちの足が引っ張られることを意味しているのか。実際には、この両方の側面がありそうだ。

 まず、ズームは、対人関係に苦手意識を抱いている人たちの印象把握を少し手助けする効果があるように見える。これは、ズームで話すほうが彼らにとって快適に感じられるからなのかもしれないし、もしくはズームでは画面上で自分自身の姿をセルフビューで確認できるからかもしれない。しかし、それだけでなく、ズームは、対人関係に苦手意識を持たない人たちのみずからの印象把握の力を妨げたようである。これは、セルフビュー機能によって画面上で自分自身の姿を見ることができるために自己意識的になり、集中が妨げられるからなのかもしれない。

 さて、一番大きな問いに話を戻そう。同僚にどのように思われているかを知りたい場合、次回のミーティングはズームで行うべきか、それとも直接対面して話すべきか。この問いの答えは、あなたがそのやり取りについてどのように感じていて、その会話に不安を感じているかどうかによって決まる。

 どんなに対人関係に自信がある人でも、普段より人とのやり取りに不安を感じる時があるはずだ。そのような場合には、ズームで会議を設定すれば、不安感による悪影響を克服して、不安を抱いていない人と同じように、自分が相手に与えている印象を正しく評価できる可能性がある。

 要するにズームは、自分が相手に与える印象をマネジメントする機会をすべての人に平等に提供する手立てになると言えるかもしれない。これは、チームリーダーとメンバーの両方にとって大きな意味を持つものだ。

研究からの教訓

 リーダーが、チームのメンバーの中に、特定の状況やその人の性格によって対人関係に不安を持っている人がいると気づいた場合は、対面型の会議ではなく、ビデオ会議を設定することが役立つかもしれない。

 対面のやり取りを避けることが長い目で見て問題の解決策になると言うつもりはない。しかし、対人関係への不安が強い人たちが、対面によるやり取りを円滑に行えるように自信をつけていく過程で、特に初対面の際には、時折ビデオ会議システムを利用することで恩恵を受けられる可能性がある。

 チームのメンバーは、本稿で紹介した研究結果を知れば、ビデオ会議で話す場合も自分の印象マネジメントの能力に悪影響が及ばないとわかり、より安心感が強まるだろう。ズームでほかの人たちが自分のことを理解してくれるかどうか気を揉むことにエネルギーを費やすのではなく、ミーティングの内容により注意を払い、チームのアイデアに積極的に関われるようになる。その結果として最終的に同僚たちによりよい印象を与えられるかもしれない。

 対人関係への不安を強く感じている場合はとくに、ズームを利用することにより、職場での自分の評判をコントロールするうえで有効な手段となる可能性がある。


"Research: Can You Tell How You Come Across on Zoom?" HBR.org, October 15, 2023.