社外の人が多いチームでも結束力を高める方法
Juan Moyano/Getty Images
サマリー:ハリウッドで働く人の大半は、独立請負業者や異なる制作会社の従業員で構成されており、短期プロジェクトのためにさまざまな人が集まって映画を制作してきた。この雇用モデルは一般企業にも広がり始めている。異なる... もっと見るグループから来た人々をうまく管理するのは、非常に難しい。本稿では、チームリーダーがこの課題を乗り越えるための方法を紹介する。 閉じる

外部人材活用のメリット

 2022年5月に始まった脚本家のストライキと、それに続く7月の俳優のストライキによって、ハリウッドで数十年にわたって労働力を提供してきた非常に柔軟な雇用モデルが浮き彫りになった。撮影現場で働く人の大半は、スタジオの従業員ではなく、独立請負業者や他の会社の従業員である。今年のアカデミー賞作品賞受賞作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の撮影に携わったスタッフを例に挙げると、俳優42名、アーティスト49名、セットドレッサー、セットペインター、さらに数百人の美術、音楽、移動、脚本、編集、衣装、キャスティング、音響、スタント、そして残りのクルーたちは、6つの制作会社、3つの特殊効果会社、その他28の会社から集まっていた。

 このモデルは、ハリウッドの範囲を超えて広がり始めている。たとえば、筆者らの調査によると、2020年初頭には、売上高10億ドル以上のテクノロジー、金融サービス、ヘルスケア、ライフサイエンス分野のグローバル企業404社において、変革イニシアティブを担うチームのうち、その企業の従業員として働く人は平均してわずか62%であった。残りは人材派遣会社やコンサルティングファーム、あるいは独立した契約社員だった。2022年の秋には、約3年にわたるパンデミックによって各社が急速な変革に追い込まれる中で、この数字は従業員が55%、非従業員が45%となっていた。

 2023年春に実施した1005社を対象とした調査から判断すると、筆者らは、2030年までに企業変革チームの平均従業員数は50%を下回ると予測している。その理由は以下の4つである。

  • ・企業は外部の人材を活用することで、重要なスキルを必要に応じて入手し、将来的に多額の退職手当を支払うことを回避できる。
  • ・大量解雇や早期退職のたびに増えるフリーランス人材プールを活用できる。
  • ・こうした人材の多くは在宅勤務が可能なため、グローバルな人材市場が形成される。
  • ・そして企業は、今日大きな問題となっている従業員のバーンアウト(燃え尽き症候群)を回避できる。

パンデミックとプロジェクトの過剰負荷

 この3年間、新型コロナウィルスの感染拡大によって、企業は必要不可欠な変革を余儀なくされた。深刻な部品不足に悩むサプライチェーンの再編、収入と支出を迅速かつ正確に追跡するための財務システムの導入、データ品質を保つための業務プロセスの見直しなどである。その結果、正社員の負荷が高まり、また、社内に必要な知識が不足している場合もあったため、企業は貴重なスキルを持つ外部の人材を採用せざるを得なくなった。

 「eコマース、デジタルデータセキュリティ、データプライバシー。これらはどれも当社には馴染みのなかったものばかりです」と、米国に本社を置く高級ブランドのアジア太平洋地域の財務担当者は調査員に語った。「現地の法的要求だけでなく、各国の政治的な問題も複雑化しています。一社だけですべてを把握することは不可能なのです」。また、一度に何十ものイニシアティブを同時進行している規模の大きいグローバル企業の中には、社内のプロジェクトリーダー人材が不足している場合もある。

 内部人材と外部人材をバランスよく組み合わせて人材配置を行い、変革イニシアティブを成功させるには、筆者らが「ダイナミック・ワークフォース・モデル」と呼ぶものが必要だ。重要なプロジェクトチームに会社の従業員だけを配置したり、作業業務を完全に外部に委託したりする静的なモデルとは異なり、動的なモデルでは、社内外の人材が対等な立場に置かれる。筆者らの調査によると、これらのイニシアティブの遂行に最も成功している上位の企業(調査対象404社の15%)は、下位の企業(調査対象企業の24%)よりも、ダイナミック・ワークフォース・モデルを採用する傾向がはるかに高かった。また、成功している上位の企業は2017年から2022年秋までの時価総額が平均63%増加したのに対し、下位の企業は平均24%減少した。

 しかし、このモデルには難しい課題もある。結束力のあるチーム文化を醸成し、知らない者同士の間に信頼関係を築き、そして物事を計画通りに進めるためにリーダーへの権限委譲を進める必要がある。プロジェクトスポンサーやプロジェクトリーダーは、成功のためにこれらの課題に対処しなければならない。