リーダーは、解決策を構築する前に、従業員の希望を理解する必要がある。さもなければ、メンタルヘルスと生産性の両方が危険にさらされる。

「上司は考えてくれている」と従業員に思わせる

 ギャラップが大企業のCHROに、「会社は従業員のウェルビーイングに配慮しているか」を尋ねたところ、65%が「そう思う」と強く同意した。ところが、米国の従業員でこの質問に強く同意した人は25%にも満たなかった。

 組織は従業員を気にかけているとリーダーが思っていても、従業員がそう感じなければ意味がない。

 あなたの会社のウェルビーイング戦略が、ほとんど誰も利用していないプログラムに基づいているなら、あなたの配慮と、従業員の配慮されていないという感覚のギャップは埋められない。

 マネジャーは、どのようなプログラムが用意されているか把握するだけでなく、従業員とウェルビーイングについて話す方法のトレーニングを受ける必要がある。CHROの72%が、マネジャーに対してウェルビーイングプログラムに関する研修を行っていると答えたが、従業員とウェルビーイングについて話す方法に関するトレーニングを提供していると答えたCHROは49%だった。

リモートチームとハイブリッドチームを率いるためにマネジャー研修を義務づける

 人事リーダーの91%は、リモート勤務のチームやハイブリッド勤務のチームを率いるマネジャーに対して、公式または非公式のトレーニングを実施してきたと答えた。だが、それで終わりではない。ギャラップの調査では、米国のマネジャーの過半数(57%)が、リモートチームやハイブリッドチームの管理について、公式にも非公式にもトレーニングを受けたことはないと答えたのだ。

 大きな問題の一つは、多くの場合、トレーニングを受けるかどうかは任意であることである。「自分の成長は自分で図る」というメッセージとセットになっていることも多い。これはマネジャーや従業員に、「君は一人ぼっちだ。助けは来ないから、自分でどうすればいいか考えなさい」と言っているに等しい。

 日々の業務に圧倒されているマネジャーが、この種のトレーニングを修了する可能性は低い。ギャラップの調査では、ハイブリッドチームを率いるマネジャーは、リモートチームや出社勤務チームを率いるマネジャーと比べて、燃え尽きを感じていると答える可能性が高い。マネジャーたちは自分で対処策を見つけると思うかもしれないが、調査によれば、マネジャーたちは自分なりの対処策を見つけるどころか、疲れ果てて自分を見失っている。

 メンタルヘルス、エンゲージメント、生産性などが危ぶまれる中、ハイブリッドチームを率いるためのトレーニングは必修とすべきであり、そのなかで、他人を助ける前に自分の酸素マスクを装着するようマネジャーたちに教えるべきだ。さもないと彼らのメンタルヘルスも脅かされることになる。

 従業員が仕事に真に熱意を抱き、生産的であるためには、仕事とプライベートの両方を充実させなければならない。従業員が自分なりのバランスを見つけるのを助け、配慮されていると感じられるようにし、マネジャーにリモートチームやハイブリッドチームを率いる能力を身につけさせる組織は、新しい時代の仕事においてウェルビーイングと生産性の両方を高められるだろう。


"Research: Flexible Work Is Having a Mixed Impact on Employee Well-Being and Productivity," HBR.org, October 16, 2023.