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プロジェクトを成功させるため、いかに断るか
プロジェクトは、開始時にスコープ(作業範囲)とパラメーターを設定して、それらをいっさい変更しなければ、順調に進む。
だが、それは現実的ではなく、当然ながら実際のほとんどの場面ではそうはいかない。むしろ、スコープクリープ(要件や仕様の変更)、プロジェクトの目的や成果物、必要条件などが初期の計画を超えて次第に拡大する現象がしばしば生じる。
スコープクリープへの対処は、プロジェクトマネジャーの役割における最も困難かつ重要な側面の一つである。これは多くの場合、ステークホルダーから追加の機能や変更を求められた時に「ノー」と言うことを意味する。
要望を持ちかけてくるのがプロジェクトのスポンサーであれ、顧客やその他のステークホルダーであれ、その相手との関係を維持したまま断るにはどうすればよいだろうか。また、その要望がプロジェクトにとって最善ではない場合、どうすれば圧力に屈せずにいられるだろうか。結局のところ、最終的な目標がプロジェクトを成功させることであれば、実行可能な物事の範囲を決めて維持しなければならない。
本稿では、あなたとチームが実現できるかわからない要望を持ちかけられた時に、どうすべきかを説明していこう。
詳しい情報を求める
あなたは、要望を持ちかけられると、反射的に「イエス」と応じてしまうかもしれない。全員を満足させたいと考えている人は、特にそうだろう。あるいは、プロジェクトをスケジュールと予算の範囲内に収めようと苦心しているため、最初に直感的に「ノー」と言ってしまうかもしれない。また、そのステークホルダーから追加の要求をされるのが初めてではない場合、いら立ちを覚えることだろう。
しかし、たとえ相手が強引でも、即答してはならない。相手が何を、なぜ要望しているのかを理解するために質問を投げかけよう。たとえば、「ご要望にお応えする前に、あなたがどのような構想をお持ちなのかを、私がさらに理解する必要があります」などと返してもよい。
質問の例
・私たちに具体的に何をしてほしいのですか。
・今回の要望の動機は何ですか。
・この変更によって、何を達成したいのですか。
・この変更はプロジェクトにとってどれほど重要とお考えですか。1~10段階で示してください。
・ご要望を実現するためにトレードオフが必要な場合、断念してもよいと思うものは具体的に何かありますか。
その後、聞いた内容を繰り返して述べ、自分が正しく把握しているかを尋ねて理解を深めよう。適切な情報を手に入れたら、なるべく早く折り返し返事をすると伝える。それは翌日か翌週か、または次に会う時かもしれない。
迅速に対応しつつも、要望を公正に検証するための十分な時間を取ろう。そのことに相手が難色を示す場合は、実行前に要望の波及的影響を検討する必要があることをはっきり伝えるとよい。待つことで相手側にも、その要望について振り返り、
要望を検討する
返答までの時間を利用して、追加の変更や機能が実現可能かどうかをじっくり検討する。重要な問いは次の2点だ。まず、それは現在のスコープに収まるのか(ここでは、きちんと文書で示されたプロジェクトスコープが役に立つ。それが参照点の役割を果たし、何が可能かを分析しやすくなる。また、要求された変更が合意済みのパラメーターから外れる場合、自分の判断を正当化するのに役立つ)。そして収まらない場合、予算と最終期限への影響はどの程度なのか。
コンサルタントのブルース・トゥルガンが「悪いノー」と呼ぶ断り方は、避けるとよい。彼は次のように述べている。「『悪いノー』は、依頼を適切に評価しなかった時に生じる。依頼者が嫌いだから、またはあまり重要でなさそうな人物だから断るといった個人的偏見によって決めた場合や、単にあまりにも多くの依頼にイエスと答えてしまったために、余力がなくて断る場合などが挙げられる」
このような断り方は、のちのちになって自分やほかのプロジェクト関係者に問題をもたらすことになる。
コストを慎重に検討しよう。追加のリソースと時間だけでなく、機会費用も含めてだ。当然ながら、スコープの変更はすべて同じように生じるわけではない。プロジェクトの価値を本当に向上させる可能性を秘めるものもあれば、成功を危うくさせかねないものもある。
プロジェクトの目標、スケジュール、予算への影響を検討しよう。さらに、承諾する場合の影響についても熟慮しよう。それにより、どう返答すべきかを明確にできる。またそれだけでなく、何が問題なのか、具体的になぜ要望を承諾できないのか説明しやすくなる。