グリーンアルゴリズムを採用するための5つの段階

 構造化されたアプローチは、プロジェクトマネジャーの組織がグリーンアルゴリズムを効果的に活用する指針となる。この5段階のフレームワークは、その出発点だ。

1. サステナビリティ目標を定義する

 明確に定義されたサステナビリティ目標を設定することは必須だ。そうした目標はロードマップとして機能し、目指しているのがカーボンニュートラルでも廃棄物削減でも、あるいは社会的利益だとしても、プロジェクトが採用するAI主導のソリューションの指針となる。国連の「持続可能な開発目標」のようなフレームワークを活用して、サステナビリティ目標を特定しよう。アサナなどのプロジェクト管理ソフトウェアは、OKR(objectives and key results:目標と主な成果)にサステナビリティの指標を含めることができる。

2. データを一元化する

 グリーンアルゴリズムがプロジェクトマネジメントにおいて最適に機能するためには、強力で一元化されたデータ基盤が不可欠だ。これにより、アルゴリズムが環境に配慮した意思決定を行うための、リアルタイムかつ包括的なデータを確保することができる。データ管理プラットフォームまたはデータレイクを使用して、エネルギー使用量、二酸化炭素排出量、廃棄物発生量などのサステナビリティの指標を保存するとよい。CKANのようなオープンソースのプラットフォームは、サステナビリティデータの追跡のためにカスタマイズすることができる。

3. アルゴリズムをカスタマイズする

 グリーンアルゴリズムによる効果的なプロジェクトマネジメントの本質は、カスタマイズにある。プロジェクトには多くの場合、一般的なアルゴリズムでは効果的に対処できない固有のサステナビリティの課題がある。二酸化炭素排出量の削減であれ、エネルギー効率の向上であれ、サステナビリティ目標を達成するために、事前に構築されたアルゴリズムを適応させよう。機械学習ライブラリのテンソルフローサイキット・ラーンは、プロジェクト独自のサステナビリティの基準を満たすようにカスタマイズが可能な、事前構築済みのアルゴリズムを提供する。

4. パイロットテスト

 グリーンアルゴリズムを大きなプロジェクトマネジメントのフレームワークに組み込む前に、その有効性を実環境でテストする必要がある。パイロットテストをうまく実行できれば、アルゴリズムがプロジェクトのサステナビリティ目標にどの程度役立っているか、また、どのような調整が必要かについての洞察を得ることができる。シミュレーション技術を使ってプロジェクトのエコシステムをモデル化すれば、さまざまなシナリオの下でアルゴリズムを厳密にテストすることが可能だ。シミュレート(Simul8)のようなシミュレーションソフトは、プロジェクトのデジタルツインを作成するのに役立ち、グリーンアルゴリズムのパイロットテストを容易にする。

5. 本格的な実施

 パイロットテストが成功したら、いよいよ精査されたグリーンアルゴリズムを本格的なプロジェクトマネジメントのプロセスに組み込む時である。ここで、概念として存在していたアルゴリズムが、プロジェクトのサステナビリティ目標を達成するための実用的なツールへとシフトする。段階的なアプローチを選択し、パフォーマンス指標を注意深く監視しながら、プロジェクトのさまざまな側面に徐々にアルゴリズムを取り入れよう。ジラのようなソフトウェアプラットフォームは、複数の部門やサブプロジェクトにまたがる実行プロセスを追跡する機能を提供している。

 プロジェクトマネジャーは、グリーンアルゴリズムをプロジェクトに組み込むことで、業務効率が向上し、サステナビリティへのコミットメントが強化されることを学んでいる。同時に、組織のリーダーは、AIと環境意識の融合がビジネスの成果を出すためのロードマップになっていることに気づき始めている。

 グリーンアルゴリズムの活用は、プロジェクトマネジャーとプロジェクトスポンサーが有する課題を、意味のあるインパクトをもたらす機会に変えることを後押しする。そのためには、綿密な計画とサステナビリティへのコミットメントが伴うことが必要になる。プロジェクトが組織の価値を創造する中心となる中で、グリーンアルゴリズムは、サステナビリティとAIの活用の両方を実現する具体的かつ効果的な方法を提供するのだ。


"The Opportunities at the Intersection of AI, Sustainability, and Project Management," HBR.org, October 27, 2023.