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最初にチャートを示し、話し始めずに待つ
研究によれば、脳の活動の約55%はビジュアルインフォメーションの処理に当てられている。おおまかに説明すると、視覚系には空間情報を処理する上の経路と、物体や形を認識して処理する下の経路がある。どのようなビジュアルがインプットされても、双方の道が活発に活動する。
チャートを画面上に表示させると、脳の腹側部がその意味を調べようとする。ハーバード大学の視覚研究者ジョージ・アルバレスは「主として、視覚とは脳が行うものだ」と指摘する。
そのため、チャートを提示してすぐに話し始めると、読み手は理解しづらくなる。彼らの脳は「見る」ことを望んでいるのに、あなたが「聞く」ことを求めるため、気が散ってしまう。視覚処理は集中的に行われるため、色や形など目立つものを目にすると、(音はもちろん)他の視覚情報を無視し始める。
チャートを示したら、数秒間はしゃべらないようにしよう。頭の中で5つ数えてもいい。見る人の脳が、新しく目にするチャートに集中できるようにすること。ビジュアライゼーションは明快で説得力のあるものにしてある。情報をわかりやすくし、タイトルとサブタイトルはアイデアを確認する手がかりにした。努力をふいにしてはいけない。チャートにその目的を果たさせよう。
ビジュアライゼーションについて語りたくなる衝動は悪いものではない。人々に「理解」してもらいたいし、沈黙は不安をかきたてる。しかし、最初の沈黙は、先回りして発するどんな言葉よりも効果的だ。教育現場では、こうした沈黙は「待ち時間」や「考える時間」というテクニックとして定着している。教師が質問を投げかけた後に3秒以上待つと、生徒がより積極的に関与し、批判的に考え、問題に対してより優れた答えを考え出す傾向がある。
チャートを見せた後に沈黙すると、それと同じことが起きる。やがて聴衆の誰かが質問をしたり、分析や意見を述べたりして沈黙を破るだろう。あなたが何も言わなくても、チャートが議論を促すかもしれない。見る人が自ら洞察を得るようにすれば、ビジュアルの中のアイデアについて、より多く深く語られるはずだ。逆説的だが、沈黙が深くインタラクティブな瞬間を生むのだ。