プレゼン中に聞き手を注目させる即効テクニック
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サマリー:あなたはデータを効果的に伝えるプレゼンテーションができているだろうか。今回は、チャートを使ったプレゼンテーションにおける「視覚的な要素」に焦点を当て、データやアイデアを聴衆に明快に伝え、肝心な場面で注... もっと見る目を集めるためのヒントや戦略をひも解いていく。本稿は、『ハーバード・ビジネス・レビュー』のシニアエディターがデータ可視化について持てる知識とノウハウをすべて詰め込んだ決定版『ハーバード・ビジネス・レビュー流 データビジュアライゼーション』(ダイヤモンド社)の一部を抜粋し、紹介したものである。  閉じる

珍しい形式や特別なコンテクストの場合は聴衆をガイドする

 プレゼンの際、スライドの箇条書きを一言一句読み上げたり、チャートそのものについて説明をしたりすることで、聴衆の関心は失われると前回説明した。したがって、チャートの内容を説明することは避けるべきだが、例外もある。珍しい形式や複雑な形式のチャートは、アイデアを議論する前に簡単な説明が必要だろう。形式になじみがあるかどうかはビジュアライゼーションの理解に影響する。例えば、このような沖積図は説明抜きで聴衆に見せるべきではない。

 このようなダイアグラムには「おー」と感嘆の声が上がるかもしれないが、見ている人が意味を見出せなければ、きれいな図であるとか、悪ければ洞察より見た目を優先したものとして評価されてしまう。

 だからといって、珍しくて複雑な形式を避けるべきではない。それらがアイデアをうまく表現するのに役立つなら、人々を引き込む強力な方法だ。しかし、ただ「すごい!」と言われるものから「なるほど」と納得してもらうまでの時間は短くなくてはならない。そのためには、アイデアに焦点を当てる前に、次のようにチャートの仕組みを説明しよう。

「この沖積図は、マーケティングコミュニケーション費の年間の変化を示しています。ここから3つのことがわかります。1つ目はプログラムごとの予算配分で、左側のバーの厚さで示されています。2つ目は月別の予算配分で、右側のバーの厚さで示されています。3つ目は、各プログラムの費用の年間の変化で、左から右に流れる線で示されています。(5つ数える)マーケティングコミュニケーションは2つのシーズンに分かれていることが見て取れます。1月から4月までの短いシーズンは支出が非常に多く、5月から12月の長いシーズンは、プログラムは多いですが支出は少ない。ダイレクトマーケティングに対する大きな投資は最初のシーズンに行われますが、この時期はイベント事業にも大きな投資が必要です。この配分でよいですか。見直す必要はありますか」

 スピーカーは沖積図の機能と仕組みを正確に説明したが、次のように具体例を抜き出して説明するという罠には陥らなかった。

「緑色のイベント事業は予算の25%超を占めており、また1月と2月に太いバーが流れ込んでいることからわかるように、支出は年初にやや偏っています」

 チャートの形式の説明は簡潔、明快で、おおまかにし、チャートに示された具体的なデータの説明はしてはいけない。