まず、あなたが計画しているキャリアシフトから始めよう。たとえば、憧れの仕事の最終面接を終え、雇用条件の交渉にも成功した人にとって最悪な展開は、就職前に内定を取り消されることだろう。あるいは、新しい職場で仕事に慣れようとしている人にとって最悪なのは、試用期間が終わる前に突然解雇されることだ。仕事で結果を出し、昇進を狙っている場合、起こりうる最悪の結末は、昇進の希望が却下されることである。
2. 譲れない条件は何かを明確にする
拙著Prep, Push, Pivot(未訳)では、自分の譲れない条件を明確にすることの重要性について書いた。あなたの譲れない条件は、あなたのキャリアプランの基礎を成す。良い時も悪い時も、あなたの決断を規定するものだ。譲れない条件とは、たとえば、いま住んでいる場所を離れないこと、給与がいくら以上であること、特定の分野に携わり続けられること、などである。
これは、なりたい自分に近づくために、何が不可欠かを考えるステップといえる。ほかのことは柔軟に対応してもよいが、譲れない条件は、あなたの決断のベースとなり、あなたを正しい方向に導く。時が経てば変わるかもしれないが、あなた特有のものだ。そして、最悪の事態が起こった時には、次のステップの土台となり、あなたを立ち直らせてくれる。
3. どのような壁にぶつかる可能性があるかを特定する
これは、10分でできる理論的な頭の体操だ。最悪のシナリオの内容を見返し、早急に対処しなければならない課題を洗い出す。
たとえば、内定を取り消された場合の代替プランを立てる場合、次のような壁にぶつかることが想定できる。
・自尊心への影響
・周囲への状況説明
・転職活動の再開
考えすぎずに、最悪のシナリオからすぐに思い浮かぶ問題を書き出そう。
4. 選択肢をチェックし、必要な支援について検討する
まず、次の質問に答える。「もし私が[具体的な問題を配置]にぶつかっているとしたら、次のステップとして何が考えられるだろうか」
考えるだけでなく、書き出そう。きちんとした文章でなくても(箇条書きでかまわない)、書き出すことが重要だ。突然何かがうまくいかなくなったら、感情が昂ってしまい、事前に用意した代替案をすぐには思い出せない可能性もある。
思いついた考えをすべてリストアップし、前進できるアイデアかどうかを基準に優先順位をつける。たとえば、新しい仕事のために転居したが、その後内定を取り消されたとしたら、労働問題に強い弁護士に相談して、発生した引っ越し費用について助言を得たり、雇用主の管轄内の州法について情報を得たりすることが考えられる。
対処法が思いつかない場合は、同じような経験をした知り合い3人の名前を書き出す。いざその時が来たら、その人たちに連絡を取り、どのように対処したか、有効な情報源や、その経験から何を学んだかなどを聞くとよいだろう。
計画を立てる間、譲れない条件のリストを定期的に見直そう。お金や時間の問題が予想される場合は、考えたステップに沿った暫定的な予算やスケジュールを作成する。たとえば、突然職を失った場合、生計を維持するために、3~6カ月以内に新しい仕事を見つけなければならないかもしれない。その期限を守るために、代替プランに1日2回、目ぼしい知人と話す時間や、毎朝、求人情報をチェックする時間をつくるといった具合だ。
5. 作成したプランを保管する
作成したプランを将来、役に立てるため、アイデアを文書にしておく。万一内定が取り消された場合に備えて代替プランを立てているのであれば、次のステップとしては、元上司に連絡して人や仕事を紹介してもらう、お世話になった人材紹介会社に転職先を探している旨を伝える、内定先に専念するためにこれまで脇に置いていた求人情報を、改めてチェックすることするなどが考えられる。プランは、必要が生じたら、あなた特有の状況に応じて修正できることを覚えておこう。
またプランは、更新の必要が生じた時に、すぐに見つけられる場所に保管しておく。将来、急な問題が生じた時、冷静かつ明晰な状態で書いたこのメモが、あなたの拠り所となるだろう。
6. 自分の健康を最優先する
このプロセスを進める際には、セルフケアのスペースを確保することを忘れないこと。代替プランの実行が必要になったら、自分に優しくする準備をしよう。ストレスレベルがピークに達すると、精神的にも肉体的にも健康を損なう可能性がある。睡眠を優先することで、自分を立て直すための土台ができ、定期的な運動は気分を高揚させるエンドルフィンの分泌を促す。
代替プランの例:昇進希望を提出する
6つのステップを完了した代替プランは、一例として次のようになる。
最悪のシナリオ:
昇進の希望が却下される。
最悪のシナリオにおいて譲れない条件:
1年以内にバイスプレジデントレベルのポストを見つける。
乗り越えなければならない壁:
・失望や不満。
・リーダーシップの意思決定プロセスが明確ではない。
可能な選択肢:
・上司との一対一の話し合いを予定し、成功のためのベンチマーク、現在のスキルギャップや経験不足について話し合う。
・半年間の能力開発計画を立てる。
・他部署の同僚に、最近昇進した同僚を3人紹介してもらい、彼らのキャリアパスについて話を聞く。
* * *
自分に何が起こるかはコントロールできないが、次に何をするか、どう対応するかはコントロールできる。代替プランを実行に移す時が来たら、経験レベルや人脈の広さ、深さに関係なく、このプロセスで最も重要な人物はあなた自身である。
筆者はキャリアコーチとしての仕事を通じて、多くのプロフェッショナルが挫折から立ち直る姿を見てきた。どのような困難に直面しても、あなたには常に選択肢があることを忘れないでほしい。どのような変わり目や不確実な時であっても、それによってあなたの運命が永久に決まるわけではないのだから。
"A 6-Step Plan to Prepare for Any Career Setback," HBR.org, November 07, 2023.