「だったらどうする」テストをやってみる

 周囲の反応を気にして躊躇している自分に気づいたら、「だったらどうする」テストで、その不安に真正面から挑んでみよう。 

・この決定が万人受けしなかったらどうするのか。

・この決断が万人の期待に添えなかったらどうするのか。

・後で軌道修正が必要になったらどうするのか。

 このシンプルなエクササイズは、一歩下がって、よりバランスの取れた視点で状況を見ることを強いる。万人を喜ばせようとするのではなく、純粋に大切なこと、つまり本物の、価値主導の選択をすることに焦点を移すのだ。

 たいていの場合、頭の中で思い描く最悪のシナリオは誇張されたものだったり、根拠のないものだったりする。また、拒絶や挫折はリーダーシップのプロセスの一部であって、自分の能力を非難するものではないことに気づくだろう。目標は、不承認を避けることではなく、不承認から学び、成長することへと意識をシフトすることだ。

翌日まで時間を置く

 冒頭で紹介したサイモンは、ある変更の発表をしたところ、複雑な反応を受け、すぐさま経営陣のところへ行って、自分は正しいことをしたという承認を得たい欲求に駆られた。だが、その衝動に流されることなく、一晩置いてから行動を起こすことにした。この時間がサイモンを冷静にし、建設的な批判と、変化への抵抗を見分ける余裕につながった。

 また、議論が分かれる問題や、感情的な議論を巻き起こす問題については、翌日まで待ってから対処することを習慣にしてもよい。時間が経てば、視野が広がり、感情が落ち着くため、より思慮深く対処できるようになる。多くの場合、ただちに承認を得たいという欲求や、すぐに急激な変化を起こす必要性が薄れていることに気づくだろう。すぐに承認を得たいという衝動が強い場合は、信頼できるメンターや同僚に相談しよう。ただし、その目的は承認を得ることではなく、あくまで別の視点を知るためだ。

自分の誓いを守る

 自分の小さな誓い(自分の基本的なニーズを大切にするとか、アイデアが思い浮かんだら声を上げるなど)を守ろう。そうすると、自分への信頼を高めることができ、長期的には他人の評価に左右されなくなる。自分のために何かをすると決めて、実行すると、そのたびに自分に対する信頼と誠実さを強く信じられるようになる。これは自信を持って決断を下し、維持するためのカギとなる。

 まずは、小さな、達成可能な誓いから始めよう。きちんと昼休みを取って充電するとか、専門的な能力開発に時間を割くといった簡単なことでよい。重要なのは、現在の余力がある範囲内で、有意義で実行可能な誓いを選ぶことだ。もしその誓いを守れなかった時は、厳しく自己批判をするのではなく、そのアプローチを調整するためのデータと見なそう。

 職場で常に求めていた承認欲求を捨てるからといって、寛大さを忘れて気配りをやめる必要はない。最も効果的なリーダーは、共感と決断、信念と思いやり、そして温かさと強さのバランスを取れる人なのだから。


"Overcoming Your Need for Constant Validation at Work," HBR.org. December 08, 2023.