とびきりよい仕事をする

 あなたの目標が全員に伝わったところで、いよいよ頭角を現す時です。あなたは自分の仕事、そして上司が不在の間、あなたに回ってくる上司の仕事で、できる限り実績を上げます。パフォーマンスを発揮することは、あなた、上司、チーム、そして会社、すべての人のためになります。

 この間、目標や仕事を遂行する中で、すべてを自分の信念に沿って行うことに集中しましょう。上司のやり方に固執する必要はありません。会社やチームにとって、新しいアプローチを試すことは重要です。でも同時に、上司を裏切るのも避けたい。あなたが上司を尊重しつつ、別のやり方を試そうとしていることが伝わるような行動を取りましょう。

 能力を隠す必要はありません。ただし、上司を踏み台にして自分を売り込んだり、彼女が戻ってきた時に不安を感じるような状況や、2人の間に不健全な競争関係をつくったりしないように注意してください。これは同僚や部下にも伝わり、彼らが「どちらかを選ばなければならない」と感じてしまったら、チームにとってとんでもないことです。

上司の味方でいる

「彼女のやり方は間違っていて、いまの私のやり方が正しい」と発信しているように思われるのを避けたいので、上司との意見に齟齬がないことを示す方法を探ります。この機会に、上司や上司のスキルを称賛するのもよいでしょう。彼女が得意とすることや、仕事に発揮するユニークな視点や経験、あなたが彼女の優れた点を認めていることを、チームの人に知ってもらいましょう。

 上司に関するこのようなポジティブなコメントには、複数の意味合いがあります。第1に、上司が戻ってきた時に経験する母親の壁バイアスに対抗する一助になります。彼女を「去る者日々に疎し」にせず、不要だと思われないようにするのです。第2に、上司を心から支持していることを示すことで、上司をおとしめようとしているという疑念を打ち消すことができます。第3に、チームプレーヤーとしてのあなたの評価が高くなります。賛辞を贈ることは、受け取る側だけにメリットがあるわけではなく、贈る側にもプラスが多くあるのです。

上司が戻ってきたらオープンに話をする

 上司が休暇を終えて戻ってきたら、不在中にあなたがしたことをすべて報告しましょう。上司は復帰早々やるべきことが多くあることは間違いないので、簡潔な文書にまとめて報告するとよいでしょう。主要プロジェクトの進捗、注意すべきプロセスの変更、すぐに気にかける必要のある事項などを記載します。復職後数日から数週間は、この要約を手引きにして話を進めていくとよいでしょう。

 彼女が落ち着いたところで、自分がリーダー職に昇格することを目標に掲げていることをあらためて伝え、彼女の代役を務めている間に自分のスキルや能力について気づいたことを説明します。ここでも、あなたが彼女のポジションを狙っていると思われないよう、透明性を保つことがカギです。

落とし穴に注意

 以上のようなことを行う一方で、気をつけたい落とし穴がいくつかあります。

 一つ目は、無理のしすぎです。誰かの休暇をカバーすることは、特にそれが長期にわたるとなれば、かなりの重荷です。仕事を2人分しているのと同じような負担を感じるものです。彼女の不在中にどこまで引き受けられるかを現実的に考え、必要な助けやサポートを求めましょう。実力を証明しようとするあまり、燃え尽きてしまわないよう注意してください。

 また、前述したように、ゴシップの種を蒔かないように気をつけましょう。上司の代役を務めているあなたの仕事ぶりについて、チームの人に何か言われる可能性は十分にあります。「あなたのほうが優秀」とか「あなたがその仕事をやったほうがいい」「彼女は本当に戻ってくると思いますか」といった言葉を耳にすることもあるかもしれません。上司の味方であるということは、この種の推測や会話に関与しないということです。

 しかし黙っていると、同意しているような印象を与えかねません。著述家のデボラ・リーゲルは、ゴシップに参加させられそうになった時の対処法についてアドバイスしています。「『この話はゴシップのように聞こえます。ゴシップを広めたかったのですか』と問えば、居合わせた同僚の大半は一歩引いて考えるようになるだろう。問題確認の会話ではなく、もっぱらコーチング、ブレインストーミング、そして問題解決の会話に専念しよう」

 最後の落とし穴は、焦りです。上記のことをすべてやったとしても、すぐに報われたり、自分の仕事が認められたりするとは限りません。昇進は一朝一夕には実現しないので、予想以上に長く待つ必要があるかもしれません。ですが、上記のことをすべて実行することで、上司やほかのリーダーから、あなたの有能ぶりとチームへの献身が注目される最高のポジションに身を置くことができるのです。


"Getting Along: How Can I Step Up in My Boss's Absence - Without Stepping on Their Toes?" HBR.org, December 19, 2023.