
就職した途端、趣味を捨てて、友人との関係も断ち切り、仕事一筋の生活を送り始める人がいる。しかし、自分の人生が仕事によってのみ定義される生き方は、幸せだと言えるのか。燃え尽きて、離婚して、すべてを失ってからでは遅すぎる。本稿では、仕事以外の活動を通じて、自分と、自分が愛する人の人生を豊かにするための3つのポイントを示す。
「出張がキャンセルとなり、急に自由な時間ができた。美しい初夏の日だ。ところが自宅の車庫に車を入れて、はたと気がついた。家族はそれぞれ自分のことで忙しそうだ。私にはこういうときに連絡できる友人もいなければ、趣味もない(昔はあった)。そのまま1時間以上も車の中で、どうしてこんなことになってしまったのかと考え込んでしまった」
成功した企業エグゼクティブに、よくある話だ。
大学を出たときは趣味も友人もたくさんあったけれど、就職してからは給料と地位(と場合によっては影響力)を獲得することが人生の中心になる。たちまち労働時間は1日12時間を超え、そこに通勤と出張が合わさると、運動をしたり人付き合いをしたりする時間はほとんどなくなる。
やがて家を買い、家族ができると、友人との付き合いはもっと減る。その一方で出費は増えるから、ますます仕事中心の人生に拍車がかかる――。
それでもなお、このエグゼクティブたちの行動パターンはエスカレートする。もっと大きな家、もっと環境のよい地区、あるいはもっとよい学校があるエリアに引っ越す。一家の大黒柱として、それは当然のことだとでも言うように。この「アップグレード」を2回やるエグゼクティブもいる。
こうして彼らは「エコーチェンバー」にはまり込んでいく。友人(場合によっては家族)と過ごす時間は皆無で、5~8年間ほど、仕事だけが自分を定義するものになる。
その結果、自分がストレスに陥ったとき助けになるはずのグループや活動から、完全に切り離されてしまう。その活動がテニスやグループでのランニングのように一定のスキルを必要とするものだと、もはや仲間に追いつくのは不可能になる。
運がよければ、突然ハッと気がつく瞬間が訪れるかもしれない。だが、多くはさほど幸運ではなく、燃え尽き、離婚し、人生の危機に陥る。