(3) 変化に大胆に身を委ねる
変化を恐れずに、新しい、よりよい自分を見つけるチャンスと考えよう。
目的意識を奪う物事に気づいて切り離し、自分が関わりたいグループや、目的意識のある自分のアイデンティティの一部になりそうな、新しい活動にエネルギーを注ごう。何より重要なのは、怖かったり、困難に見えたりするときも、耐え抜くことだ。
あるハイテク企業のエグゼクティブは、20年以上のキャリアを持ち、大きな成功を収めてきた。しかし仕事の重圧から、健康とアイデンティティがダメージを受け、燃え尽きて、仕事を辞めることにした。
そして、自分の健康に重点を置き、ヨガをやってみることにした。ただ、自分がシニカルな性格であることを知っていたから、嫌になっても3回は挑戦すると夫に約束した。
実際、初めて挑戦したとき、そこで出会ったやたらといい人たちに彼女は呆れた。2回目のヨガでも、インストラクターを「変わり者」で「グラノーラ」オタクだと内心笑っていた。3回目は、そこまで荒れた気持ちにはならなかったが、もう十分だと感じた。レッスンの最後、そのインストラクターはいつものように、瞑想中の生徒全員の頭に手を当てた。
すると驚いたことに、元エグゼクティブの彼女は涙が止まらなくなった。彼女は自分が初めて弱さをさらけだし、ありのままの自分を取り戻したことに気づいたという。
無様な格好をさらし、簡単に見えたことに疲れ切っていた。だが、彼女はその弱さを、同じ部屋にいる赤の他人に見せた。それは、会社人間だったときにはありえなかったことだ。
こうしてヨガは、彼女と夫の生活の中心を成す要素になった。2人の社交に大きな位置を占めるようになり、休暇先を決める要素にもなった。ただしそれは、彼女が変化に前向きになり、馬鹿馬鹿しいと思っても続けていなければ、けっして起こらなかったことだ。
ヨガを通じて人間関係は、仕事一筋だったときにはなかった多面性と視点を彼女の人生にもたらした。それはレジリエンスの源になり、他人の成功の定義ではなく、自分の定義で生きる勇気を与えてくれた。
彼女のように重要な瞬間を発見し、活用するためには、以下の点を考えるといいだろう。
●要領を得ないときから変化を始めよう
自分から少しばかり無理をしてみるのは、快適なときや、ある状況を乗り切る用意をする必要があるときだ。ちょっとだけ前のめりになってみよう。早い時期に幅広い変化に取り組み、既存の活動(信仰やスポーツ)とのつながりを見直し、新しい活動を最低でも一つ始めよう。
●自分の野心的な部分や行動や人間関係に集中する
その変化を機に、社会的に定義された目標や野心、あるいは自分に影響を与えてきた既成概念を見直してみよう。やってみたい仕事のやり方や、人生に多面性と幅を与えてくれる活動に投資する方法を考えよう。
●自分を価値観から引き離すショックや感情の高まりに注意する
ネガティブな出来事や時間に反応するあまり、なりたい自分から離れてしまわないようにしよう。一時的に見えたものが、周囲の期待の一部になってしまうのはよくあることだ。
現在が困難な時期であることは間違いない。だが、私たちの経験は、自分が引き起こしたものであることは多い。誰と何をするかについて、私たちがこれほど大きな力を持ったことはない。
そのコントロールを手放してはいけない。もし失ったら、取り戻すこと。最大の目的意識とウェルビーイングの両方を併せ持つのは可能であるということを、筆者は繰り返し見てきたのだから。
HBR.org原文:Do You Have a Life Outside of Work? May 13, 2020.
■こちらの記事もおすすめします
大切な仕事を失ってからの人生に意味を見出す方法
仕事が自分のアイデンティティのすべてになっていないか
自分を犠牲にすることは、起業家として成功するための必要条件ではない
DHBR2019年9月号特集「時間と幸福のマネジメント」