筆者のチームは、こうした人たちを20年以上にわたり研究してきた。そして、この悪循環に陥らないグループが存在することに気がついた。仕事で高いパフォーマンスを示しつつ、ウェルビーイングも充実している人たちだ。
そこで彼らに注目して、仕事で成功を収めつつ、幸福感のカギである人付き合いを維持する秘訣を調べることにした。
まず、わかったのは、このタイプの人はほぼ例外なく、仕事以外で2~4つのグループで信頼のおける人間関係を維持してきたことだ。それはスポーツやボランティア活動のこともあれば、地域活動や宗教活動であったり、読書クラブやディナークラブだったりする。
これとは対照的に、結婚を2回あるいは3回している人や、危機的なレベルまで不健康な人、あるいは自分にひたすら我慢してくれる子どもがいる人たちは、ほぼ例外なく仕事一筋の人生を送り、人生の成功を仕事の成功によってのみ定義していた。
なぜ、そうなってしまったのか。実のところ、善意からそうなった人は多い。
一家の大黒柱として物事を見ることは、仕事一筋の人生を正当化する魅力的な方法だ。「家族のために犠牲を払っている」というわけだ。
もちろん、家族を持つことが悪いわけではない。家族はむしろ、人生の要となる。
しかし、家族のために働くことだけが人生になり、仕事によって自分が定義されるようになると、人付き合いを維持しながら家族を養っている場合よりも大黒柱としての貢献度は下がる。仕事ばかりしているとウェルビーイングが失われ、心身ともにマイナス面が出てくるからだ。
もしかしたら、私はそういう人間になってしまったのかも――。そう感じる人もいるかもしれない。多くの人が人生の意味や目的について、より深く考えるようになった最近であれば、なおさらだ。
だが、たとえ一面的で不健康な人間になってしまったとしても、これからそれを変えて、仕事以外の活動や人付き合いを増やして、自分と愛する人の人生を豊かにすることはできる。
そこでまず、3つのことを提案しよう。