
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
上司の産休中に自分の有能さをどう示すべきか
本稿は、職場のエキスパートであるエイミー・ギャロがよくあるやっかいな人間関係の問題に対し、アドバイスするコラムである。
人を押しのけず、ステップアップしたいあなたへ
あなたがこの質問をしてくれてよかったと思う理由が2つあります。第1に、ご自身のキャリアアップに向けて、自分をどう位置づけるかを戦略的に考えるのは賢明なことです。一生懸命仕事をしていれば、すべてを仕事が物語ってくれると思っている人が本当に多いのですが、それだけでは限界があります。人の目に触れさせないといけないのです。
第2に、あなたが出すぎないよう気をつけておられることが素晴らしいと思います。これはたしかにあなたにとってチャンスですが、慎重に動かなければ、あなたの評判だけでなく、上司のキャリアにもリスクがあります。たとえあなたのほうが上司の仕事に向いていたとしても、上司の印象を悪くしてしまっては誰のためにもなりません。
チャンスとリスクのバランスの取り方についてお話しする前に、上司が置かれている立場について触れておきたいと思います。なぜなら、彼女には母親として職場で受ける特有のバイアスがあるからです。それを理解する(あなた自身が母親であるなら、それを認識する)ことが役に立つでしょう。
「母親の壁」バイアス
女性が職場で受けるバイアスは数多くありますが、母親になる時には、職場での受け止められ方が特に大きく変わります。 Bias Interrupted: Creating Inclusion for Real and for Good(未訳)の著者でカリフォルニア大学教授のジョーン・ウィリアムズは、「母親の壁」(Maternal Wall Bias)と呼ばれる現象について研究し執筆しています。彼女はこのバイアスをこう表現しています。「それまで非常に成功していた女性が、妊娠したり、産休を取ったり、フレックスで働き出したりすると、突然能力を疑われてしまう場合がある。業績評価は急落し、政治的な支持も失うのだ」。つまり、あなたの上司は、これまでより立場が危うくなるということです。
周囲の見方や、この偏見が彼女のキャリアに影響するかどうかは、産休の長さによっても左右されます。オックスフォード大学サイード・ビジネススクール准教授のイボナ・ヒデグらはさまざまな国で調査を行った結果、次のことを明らかにしました。「産休の長さは、女性の行為主体性や仕事へのコミットメントを示すサインとして認識され、そのため女性の献身度を測るために使われている。結果的に、女性の行為主体性、仕事へのコミットメント、リーダーとしての適性に対する認識が損なわれている」
さらに、「母親が有給勤務から離れる期間が長ければ長いほど、産休後の昇進、管理職選任、昇給の可能性は低くなる。また、解雇や降格のリスクが高くなる」。幹部クラスに達する女性が少ないのは「オプトアウト」しているからだと主張する人は多いですが、そうではないことが調査で明らかになっています。現実には、ワーキングマザーの多くはかなり野心家なのです。
私がこのエビデンスを共有するのは、母親になる上司に苦しい戦いが待っていることを理解してほしいからです。もちろん、このバイアスをあなたの手でなくすことはできませんが、悪化させないように最善を尽くすことはできます。そこで、リスクを念頭に置きつつ、あなたがキャリアアップのためにできること、このチャンスを活かしてステップアップするためにできることをお話ししましょう。
キャリアアップのためのステップ
透明性を保つ
もしあなたがさらに大きな役割を担いたいということを明言していないのであれば、何よりもまずそれを周囲に伝えましょう。周囲には、上司だけでなく、社内のほかの人々、つまり上司の上司や人事マネジャーなど昇進を決める立場にある人なども含まれます。上司の仕事を引き継ぎたいわけではなく、ステップアップに興味があることを明確に伝えましょう。
それをオープンにして、自分のキャリア志向について率直に話し合うことには、2つの利点があります。1つは、昇進を決定する責任者があなたの目標を把握し、適切なポジションが空いた時にあなたを思い出してくれるということ。うまくいけば、あなたが条件を満たしているかどうか、まだ早いと判断された場合には、候補に上がるにはどのような経験やスキルが必要かといったフィードバックをくれるでしょう(フィードバックがなかったら、求めるのも可です)。上司が不在の間、代役を務めることは、そうしたスキルを練習したり磨いたりする機会になるかもしれません。
2つ目は、この透明性によって、上司のキャリアを犠牲にすることなく昇進したい気持ちが伝わるということ。社内政治は、ほとんどすべての職場に存在するのが現実ですが、自分の出世のために秘密裏に上司をおとしめようとしているなどと、わざわざ人の誤解を招いたり、噂の種をみずから蒔く必要はありません。自分の目標を誰に対してもオープンにすることで、こうした詮索を避けることができます。