フレームワークの実践

 このフレームワークは、実践の場でどう機能するのか。例を3つ挙げよう。

1. 紹介 

 人や物の紹介は、とりとめがなく、混乱しがちだ。このフレームワークを使うことで、これから何が起こるかが明確になり、期待値を設定できる。

人を紹介する時

・事実:クラーク博士をご紹介できることを光栄に思います。愛着理論に関する博士の知見をお話しいただきます。

・意味:博士の研究は、多くの人々の日々の決断の仕方を変化させてきました。今夜ここを出る時には、みなさんもきっと考え方が変わっていることでしょう。

・行動:さっそくクラーク博士をお迎えしましょう。

物を紹介する時

・事実:当社の製品の最新バージョンをご紹介できることを嬉しく思います。今回のリリースでは、多くのユーザビリティを向上させ、スピードも改善しました。

・意味:お客様はより簡単にタスクを完了し、時間とお金を節約することができます。

・行動:このカンファレンスを終えたら、ぜひ本日中にインストールしてください。

2. 質問に答える

 質問をされたら、このフレームワークを使う絶好の機会だ。たとえば、面接でこう聞かれたとしよう。「なぜあなたはこの仕事にふさわしい存在といえるのですか」

・事実:私は顧客と接する仕事で12年以上の経験があり、新しいシステムへの移行や新しいプロセスの導入などに取り組んできました。

・意味:こうした経験は、御社のお客様に質の高い成果を提供すると同時に、御社の導入プロセスの合理化を支援するのに役立ちます。

・行動:私の適性について、私の元クライアントにお尋ねいただければ幸いです。

3. フィードバックを与える

 筆者は、建設的なフィードバックを提供する必要があるクライアントには、このフレームワークを使うよう指導している。たとえば、期限内にリポートを仕上げられなかった同僚がいるとする。

・事実:あなたのリポートが、決められた期限内に提出されていないようですね。

・意味:ピッチの練習に支障をきたし、クライアントとのミーティングが台無しになるかもしれません。

・行動:明日の朝までにリポートを完成させてください。私に手伝えることがあれば教えてください。

 結論として、体系化されたコミュニケーションをマスターすることで、メッセージをつくり上げ、伝える内容に優先順位をつけることができると同時に、オーディエンスもあなたの情報を消化し、記憶することができる。「事実、意味、行動」のフレームワークを使えば、さまざまなコミュニケーションの状況を乗り切ることができ、あなたのメッセージが相手に届くだけでなく、確実に内在化され、行動に移される。


"A Simple Hack to Help You Communicate More Effectively," HBR.org, January 04, 2024.