
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
攻撃的な言動を目撃したら、どう介入すべきか
職場における攻撃的な言動、つまり、怒鳴ったり、見下すようなコメントをしたり、脅したり、嘘や噂を広めたりすることは、多くの組織に蔓延する問題であり、年間1兆9700億ドルものコストを生じさせている。これには、医療費のような直接的コストと、病欠や離職、生活の質の低下による生産性の低下という間接的なコストが含まれる。職場で攻撃的な言動のターゲットになったり、それを目撃したりした従業員は、健康を害したり、仕事の成果が落ちたりしたと報告されている。
このため組織は、さまざまな防止策を探っている。なかでも最近広がっているのは、「傍観者介入」訓練だ。これは、攻撃的な言動を目撃した従業員が、効果的に介入できるようにする訓練を施す措置だ。実際、傍観者介入を義務づけようとしている公的機関や教育機関は少なくない。介入を義務づけていない組織でも、「見かけたら、声を上げろ」といったスローガンや、傍観者に立ち上がる人(アップスタンダー)になるよう促すキャンペーンにより、介入を推進している。
傍観者の存在は、職場における攻撃的な言動がどのような結果をもたらすかに大きな影響を与える。傍観者が介入すると、加害者と被害者双方の経験に影響を与えることができる。とはいえ、これは一筋縄ではいかない。
介入の方法としては、被害者にサポートを申し出たりする共感的な方法から、加害者に対峙する対立的な戦略まで、さまざまな選択肢がある。それぞれのアクションは、被害者と傍観者の両方に何らかの結果(必ずしもよい結果とは限らない)を及ぼす可能性がある。たとえば、加害者に対して声を上げた傍観者の多くは、反発に遭う。これは加害者が、「私は善良な人間であり同僚だ」という自己認識を否定されたと感じて、自己防衛に走るからだ。
したがって、傍観者がどのような介入方法を取るかが重要になる。研修では、介入を促すだけでは不十分であり、意図せぬ反発を受けた場合の影響を最小限に抑える介入方法を教える必要がある。
筆者らの最近の論文は、傍観者が効果的な介入をするための重要な手引きとなる。本稿では、傍観者の介入に関するいくつかの誤解と事実を確認し、より思慮深いアプローチによって、加害者が自己防衛に走るのを抑え、関係者全員にとってより生産的な結果をもたらすことを論じたい。
誤解:傍観者の介入はすぐに行わなければならない
傍観者も加害者も、感情が高ぶると、状況を客観的に見極めて対応することが難しくなる。多くの場合、冷却期間を置いてから問題に対処するほうが賢明だろう。そのような対処法が最適なのは、危険が感じられる状況や、傍観者がとっさにどう対処してよいかわからない場合、あるいは不適切な行動を取っていることを加害者に気づかせることが目的の時だ。
一方、ターゲットに差し迫った脅威がある場合は、迅速な行動が必要かもしれない。そのような場合、傍観者は被害者を危険から遠ざけるか、加害者の注意を逸らすなど、すみやかに介入する必要があるだろう。