誤解:傍観者の介入は対立的でなければならない
多くの人は、加害者に直接対峙することに居心地の悪さを感じるだろう。その気持ちはよく理解できる。そうではなく、被害者を助けたり、新たな虐待を防いだりするといった、非対立的なアプローチはいろいろある。被害者の話を聞いてやるとか、共感を示すとか、支援を申し出るといったサポートは、被害者に慰めや安らぎを与えるうえで大いに役立つ。監督当局や人事部の担当者に通報することも、加害者と直接対峙せずに、問題が適切に対処されるようにする建設的な方法だ。
誤解:傍観者の介入は常に懲罰的であるべきだ
研修では、加害者に建設的な方法で対処できることを強調すべきだ。たとえば、加害者に対して個人的に、そして共感的に対処することにより、加害者が「面目を保つ」機会を提供してもよい。こうすると、サポート的な環境をつくり出すことができ、加害者が追い込まれて、攻撃されていると感じずに自分の間違いから学び、成長することを可能にする。もちろん、このような建設的なアプローチが意味を持つのは、被害者のダメージが軽微で、加害者との関係改善が可能な場合に限られる。
事実:加害者との関係が重要になる
傍観者の介入が加害者にどう受け止められるかは、両者の信頼関係や、どのくらい近い関係か、そしてこれまでの交流によって変わってくる。加害者と近い関係で、信頼関係がある場合は、2人だけで率直に話すことで、その振る舞いに対処が可能かもしれない。逆に、2人の間に距離があり、あるいは緊張がある場合は、信頼できる仲介者や上司の助けを得るほうが効果的かもしれない。
事実:職場での力関係が介入結果に影響を与える
より大きな権限や影響力を持つ人は、処分をしたり、新たな基準を設けたりして、変化を起こしやすいことに気づく必要がある。処分を受けるおそれなどの抑止装置がないと、加害者は有害な振る舞いに逆戻りする可能性がある。
しかし、権限だけを頼りにすると、加害者の行動を長期的に変えられないおそれがある。変化を持続させるためには、組織規範がていねいな交流を促し、攻撃的な言動を認めないと示唆することが重要だ。幅広い文化を進化させると、長期的かつ前向きな変化をもたらす弾力性の高い基盤を築くことができる。
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介入が予想外と受け止められて、成功につながらない可能性もある。多様な介入方法と、問題の中心人物を理解する重要性に気づくことが、成功する戦略のカギとなる。
筆者らの研究は、傍観者ではなく加害者に視点を移す重要性を強調している。加害者が介入をどのように受け取るかを理解し、介入を建設的に受け取る可能性を最大化するアクションを取れば、介入をより確実に成功させることにつながる。傍観者介入に、十分な情報に基づき積極的なアプローチを取り入れることが、職場における虐待に対処するだけでなく、成長とコラボレーションと持続的な成功につながる環境づくりのカギとなるだろう。
"How to Intervene When You Witness Workplace Aggression," HBR.org, January 12, 2024.