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経営トップに上り詰めたいなら自分の限界を知ること
多くのリーダーは、特にリストラやレイオフ、予算削減といった混乱の中では、個人や部門のニーズを優先する。自分の成功を主張したり、部下をサポートしたりするのはごく自然なことだが、それが組織の足を引っ張るようでは問題だ。
筆者らのクライアントのエレナ(仮名)は、過去20年間に買収と売却を繰り返した会社で働いてきた。M&A(企業の合併・買収)のたびに、リーダーシップの体制や所有者が変わり、エレナは自分の上司やメンター、サポーターなど、かつてのリーダーシップチームがさまざまに変容するのを目にしては無力さを感じていた。新しい上司の下に配属されたり、自身が率いてきたチームが再編されたりすると、エレナは深く傷ついた。
こうした場面ではしばしば、エレナに縄張り意識が働いた。クライアントサクセス担当のアメリカ州エグゼクティブバイスプレジデント(EVP)に昇進した時には、新しく営業担当になった同僚のEVPに引き継ぐべき重要なクライアントとの関係を保持し続けた。縄張りを守ろうとするこのアプローチを取ったことで、エレナは新しい役職で潜在能力を発揮できなかった。顧客との関係を同僚の営業担当EVPに引き渡したら「失う」ことになるものにばかり、気を取られていたのである。その結果、エレナはみずからの働きで顧客体験に大きな影響を与える機会を逸し、長年望んでいたエグゼクティブの地位を獲得する機会を得られなかった。
エレナの経験は、特殊なものではない。筆者らはコンサルタントやエグゼクティブコーチとして、縄張り意識に囚われたリーダーが、成功する能力を維持するために既存のチームや顧客との関係、リソースに過剰に執着するのを多く見てきた。有能なリーダーが人材や投資、注目度などをめぐって社内で競うこと自体は、珍しいものではない。そもそもリーダーらがここまで成功を収めてきたのは、そうした個人の意欲のおかげである。しかし、リーダーシップの枠を広げて経営トップに上り詰めようとする時、この「自力でやる」という考え方では、それ以上先に進めなくなってしまう。本稿では、シニアリーダーが「成功」を共通のゴールとして再定義するための4つの戦略を紹介しよう。
1. 自己認識を高める
状況における自分の役割を明らかにすることから始めよう。与えられた状況をあらゆる角度から検証し、問題の原因で見落としているものはないか確認するとよい。ここには自己認識を高めることも含まれる。調査によると、自分自身と自分の目標を理解し、他人の意見を尊重するという自己認識の基準に当てはまる人は10~15%しかいない。対立は何もない状況で起こることはなく、その状況を生み出した一因が自分にあると認識するのは早ければ早いほどよい。