リーダーがコラボレーションに苦戦する時の解決法
Jasenka Arbanas/Getty Images
サマリー:組織内で個人として成功してきた人がリーダーになることは少なくない。しかしリーダーに求められることは個人としての成功ではなく、組織の成功である。そこではコラボレーションが欠かせないが、リーダーが自然なコ... もっと見るラボレーションに苦戦してしまうことがしばしばある。本稿では、このような課題をいかに乗り越えるかを論じる。まずはコラボレーションに苦戦する原因を突き止めることから始め、コラボレーションを行うためにリーダー自身が学び、具体的にアクションを起こすことが必要になる。 閉じる

企業の競争力は組織の継ぎ目で創造される

 本稿の共同執筆者ベラスケスのクライアントに、CEO直属のシニアエグゼクティブがいた。仮にチャーリーと呼ぼう。チャーリーは業績抜群であるにもかかわらず、最近、同僚たちが彼と一緒に仕事をするのに苦労しているというフィードバックを受けた。結果を出そうとする強い欲求、彼が意見を述べる際のいっさいの無駄を許さない姿勢、そしてほぼあらゆることに熱心に取り組む姿が、チャーリーを必要以上に競争心の強い人間に見せていた。もっとも、彼自身はまったくそのようなつもりはなかった。だが気が付かないうちに、最も重要なステークホルダーである同僚の信頼を失っていたのである。

 こうした悩みを抱えているのはチャーリーだけに限らない。優秀なエグゼクティブのコンサルタント兼コーチとして、筆者らがしばしば目にする光景だ。有能なリーダーが自然にコラボレーションできないというのは、珍しい話ではない。結局のところ、彼らのような人たちは、徹底した個人主義に則って、キャリアを構築してきたのである。だが人より抜きんでることに力を注いできたことが、のちのち、命取りになることは少なくない。

 HBRの調査では、コラボレーション失敗の原因として、組織の壁(67%)、リーダーにコラボレーションのビジョンがない(32%)、上級マネジャーが支配を手放したがらない(32%)などが上位に挙がった。今日の職場では、かつてないほどコラボレーションが進み、機能や部門の境界線は判別できないほど薄れている。にもかかわらず、世界の従業員の39%が、彼らの組織のコラボレーションは不十分であると答えている。

 一般に、企業の競争力の大半は、複数の機能が協力してケイパビリティを形成する場、つまり組織の「継ぎ目」で創造され、提供されている。たとえば、マーケティング、消費者分析、研究開発が協力してイノベーションのケイパビリティを形成する。そして、その競争価値を提供するには、各部門のリーダーが組織の壁を越えたコラボレーションを行うことが欠かせない。

 もしあなたがリーダーとして同僚とのコラボレーションに苦戦しているならば、まず、その原因を把握し、コラボレーションのスキルを養う努力をする必要がある。

なぜ自然にコラボレーションできないのか

 コラボレーションのスキルを向上させるには、まず自然にコラボレーションできない原因をよく考えることが大切だ。筆者らが接するリーダーによく見られる原因をいくつか挙げよう。

競争心が強く、自分の影が薄くなることが不安

 あなたはこれまで数々の勝利をあげたり、成績優秀者になったりしてきたことだろう。だが、誰かとスポットライトを共有すると思うと、心穏やかでいられなくなる。おそらく、あなたのアイデンティティと成功の感覚は、長年、個人的な達成感によって強化されてきたのだろう。

 だが、組織で人の上に立ったら、成功とは複数の努力が統合された結果であるということを理解すべきである。他人があなたより輝いて見え、あなたの貢献が目立たなくなることに不安を覚える時、自分の心の動きに注目してほしい。自分のユニークさが損なわれるのではないかという内なるナラティブを把握することが、変化への最初のステップだ。あなたの貢献は他人の貢献と融合した時に増大すると信じるべきである。

ヒエラルキーに強く依存して、仕事をこなしてきた

 これまでは自分の所属する部署の中で活動し、部下を思いやりつつ指導し、首尾よく結果を出してきたのかもしれない。あるいは、ヒエラルキーや権威への服従を重んじる文化の中で、職業人として成長してきたのかもしれない。

 しかし、組織で上の立場になると、対等な同僚への影響力が極めて重要となり、それは部下に対する立場上の権威とはまったく違うことを理解しなくてはならない。

 大切なのは、指図よりも好奇心と対話なのだ。本稿筆者の一人であるカルッチのクライアントはこの問題で苦戦しており、360度評価で同僚から「まるで私が部下であるかのように、大声で命令する」というフィードバックを受けた。カルッチはこのフィードバックを持ち出して、これまで部下と同僚とでアプローチを調節したことがあったかとクライアントに質問した。すると、なるほどと思える答えが返ってきた。「私が同僚たちの権威や専門能力を尊重していることについて、同僚たちは理解しているものだと考えていました。でも、明らかに私が間違っていたようです」。尊敬は相互に努力して獲得するものであり、肩書きに自動的に付いてくるものではないことを、彼は理解していなかったのである。