関係よりも成果を重視してきた
人間は元来、他の人間とのつながりの中で生きている。しかし、仕事で優秀な人が、人間関係に用心深くなるケースは珍しくない。
もしあなたが他人から好かれる必要がないことを誇りとしてきたのなら、その原因を深く探ってみよう。仕事での関係とそれ以外の生活での関係をじっくりと振り返ってほしい。どの部分で有意義なつながりを築けただろうか。どの部分でつながりを避けてきただろうか。つながりやすい関係を持っているだろうか。
特に注意すべきなのは、どの部分で関係を避けているかである。ベラスケスのクライアントの一人は、インドで5人兄弟の末っ子として育った。彼は権威のある人との協働的な関係を築くことに難儀していた。好戦的になり、身構えてしまうのだ。ベラスケスはクライアントの成長過程での葛藤について質問した。すると彼は、父親と兄たちを「ボス」として見ていたこと、そして父親と兄たちに対するものと同じように、怒りを抱えたまま同僚を見ていたことに気が付いた。
人をなかなか信じられない
あなたは細かいことまで気付くのが自分の強みだと思っているかもしれない。また、過去に他人に任せて望ましくない結果になった経験があるので、過度に用心深くなっているかもしれない。不確実さをおそれ、堅固な根拠に基づいてのみ決断したいのかもしれない。
ここで、マリオの例を挙げよう。彼は優秀な弁護士で、企業における百万ドル規模の重要な契約をチェックし、締結する仕事をしていた。だが残念なことに、支配欲求の強い彼は、些細な問題にもかかわらず、それを取引が破綻するかのような重大問題に発展させてしまうのだ。
マリオが他人をほとんど信用できないのは、「油断すると、
コラボレーションの方法がわからない
あなたは単にコラボレーションというものを学んでこなかっただけなのかもしれない。コラボレーションはさまざまなスキルと特性から成り立っている。アクティブリスニング、対立の処理、問題解決の共有、自己制御、謙虚さ、好奇心、他人を思いやる姿勢が組み合わさって実現する。
おそらく、あなたはこうしたスキルの一部を培ってきたことだろう。だが、周囲から真に協働的だと思われるほどには、これらが身についていないのかもしれない。そうしたスキルや姿勢が欠けているがゆえに、どのようなことができないのか、ていねいにリストアップしてみよう。コラボレーション能力を高めるに当たって、スキル開発の焦点を絞るのに役立つだろう。
さて、コラボレーションに取り組めない原因がはっきりしたら、次はコラボレーションのスキルを開発し、あなたとの仕事はしづらいと感じている人々との信頼関係を取り戻す手段を講じよう。
コラボレーションに難儀する原因について、これまでに学んだことを思い出せば、どこから学習を始めればよいかがわかる。以下で紹介する戦略では、まず、あなたが構築または再構築したい評判資本について検討する。次に、他人との協働的なつながりを強化する具体的な方法に焦点を当てる。
まず、どのような人として知られたいかを決める
あなたの現在の行動は、意識しているかいないかにかかわらず、あなたの自己像を反映している。もしコラボレーションができる人として認識されたいなら、まずそのような思考態度を身に付ける必要がある。手始めとして、次のような方法がある。
変化や新しい考えに心を開く
新しい視点を取り入れることは、共感と思いやりを示すうえで必須条件となる。自分の見解を問い直し、相手の見解が明確になるような質問をしよう。そうすることで、あなたが彼らの視点を大事にしているという強いサインを送ることができる。
他人を対等に評価する
あなたの高い専門能力がほとんど信用につながらず、「みんなと同じにならなければならない」環境に身を置いてみる。互いに依存し合う場に身を置けば、対等な立場になるとはどういうことかを実感できるだろう。
たとえば、趣味のグループや好きなスポーツの地域レクリエーションクラブなど、仕事を離れたチームやクラブに加わるのもよい。その中で、何を感じ学んだかを記録し、どの部分で楽しめたか、どの部分で居心地が悪いと感じたかに注目する。
信頼される人になる
あなたがどのような人であれ、やはり成功するには他人が必要であり、他人にもあなたが必要である。ステークホルダーとの関係を深め、こうした相互依存性を受け入れよう。あなたが依存する重要なプレーヤー、そしてあなたに依存する重要なプレーヤーを見極めて、彼らとの時間を持とう。
一緒にいる時、自分の頭の中で何が起きているかを注視するとよい。相手を疑っているか、または用心をしているか、それとも心地よく感じ、好奇心が働いているか。自分が心を開きやすい条件を見つけることも大切だ。信頼できる関係を築き、維持することは、持続可能なコラボレーションの土台となる。