納得できない会社の決定に、どう折り合いをつけるか
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サマリー:経営陣が現場のマネジャーにとって納得できない決定を下すことは少なくない。こうした状況下で、マネジャーがチームのために前向きな姿勢を保ち、経営陣と良好な関係を維持するには、どう行動すべきだろうか。筆者は... もっと見る、8つの質問に答える「チーター・シート」というツールを用いることで、自身の感情と組織の決定の不整合を解消し、チームを前向きに導くことができると説く。 閉じる

納得できない状況に直面した時、必要なこと

 2023年フロリダ州北部沿岸を襲ったハリケーン「イダリア」は、エリシアがプロジェクトマネジャーとして働いていた住宅建設会社に大打撃を与えた。部分的に完成していた現場数カ所が破壊され、会社の倉庫や貯木場の資材が使い物にならなくなった。経営陣は何とか会社を存続させようと努め、そのために従業員の1割を解雇せざるを得なくなり、また残った従業員全員に当面20%の賃金カットを言い渡した。

 エリシアは怒った。経営陣の決定に納得できなかったが、その決定を擁護し、自分のチームに伝えるのが自分の仕事だとわかっていた。それでも、そうするのは気が引けた。最初、彼女は怒りの感情を乗り越えることができなかった。彼女はチームが感情を吐き出し、喪失感や苦境に対処する場をつくろうと、オフサイトでのセラピーを計画し始めた。しかし、すぐにそれが逆効果であることに気づいた。彼女は行き詰まり、どのように進めるのがベストなのか考えあぐねていた。

 仕事をしていると、このような状況に陥ることはよくある。納得できない決定に従い、それを説明し、時には実行しなければならないことさえある。怒り、不安、混乱を感じる。なぜ自分に相談がなかったのか。チームにどう説明すればよいのか。自分はそもそも全容を知らされているのか。

 誰もが自分の船の船長でありたいと願っているが、実際の世界では、他人の決断に影響されることは多い。自分が主導する時もあれば、人に従わなければならない時もある。その指示に納得できない時もある。だが同時に、波風を立てるより、チームのために前向きな姿勢を保ち、経営陣と良好な関係を維持することのほうが重要であることもわかっている。では、どうすれば潔く従い、前に進むことができるのだろうか。

 筆者のクライアントの間でよく見られるのが、不快な状況に対して前向きな姿勢を取ろうとするあまり、本来は協力的で向社会的であるはずの経験を台無しにしてしまうことである。表面的にはその決定に賛同しているように見せているが、内心はネガティブな感情を捨てていないのだ。エリシアもそうだった。公には、不評を買う経営陣の決定を支持し、実行しなければならないことはわかっていたが、チームの怒りを感じ、自分自身の怒りも完全に手放せていなかった。