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企業がイマジネーションを取り戻すために
成長は、長期的な価値創造において不可欠である。筆者らが2000社以上の大企業の株主総利回り(TSR)を分析したところ、5年間のTSRの半分以上は売上げの成長(売上増)に起因することが明らかになった。残りは投資家の期待、コスト削減、営業利益率の変化に由来する。10年間では、TSRの4分の3近くが売上増によるものだ。
総合的な成長率が高い時代には、企業は上昇気流に乗る態勢を整えるだけで成長できた。しかし、いまはそのような時代ではない。資本コストが上昇して成長への投資コストが高くつくようになったため、投資家を短期的な利益を求める方向に駆り立てている。ルールに基づく取引が衰退してグローバリゼーションのメリットが目減りしていることが、さらに事態を複雑にしている。
もはや企業は新しい場所への進出や、低コストに絞った調達による需要の拡大では、たやすく成長できない。むしろ、地政学的緊張のために一部の市場(たとえば中国)から撤退したり、無駄のない(そしてますます脆弱になる)サプライチェーンを多様化したりする必要に迫られつつある。とどめは、地球環境保護のプレッシャーが成長の可能性をさらに制約するかもしれないことだ。
この厳しい環境において、成長を追求する企業が需要を伸ばすためには、イノベーティブな商品を開発することが必須である。イノベーティブな商品は本質的に、イマジネーション、つまり新しい可能性を着想し実現することから生まれる。およそ優れた企業は、イマジネーションから生まれる行動を土台としている。紙のパックが不要な掃除機を想像したダイソン創設者のジェームズ・ダイソンしかり(地元の製材所で、サイクロン式分離器が、おがくずを空気から分離するのを見て、インスピレーションを得た)、透明性のある価格設定の多様な商品を一般の人々に提供する現代のリテールバンクを想像したメリルリンチ創設者のチャールズ・メリルしかり(前職のスーパーマーケットチェーンのセーフウェイでの経験からインスピレーションを得た)である。
問題は、大企業がイマジネーションの起点を忘れてしまいがちなことだ。企業として成長するにつれ、関心が内向きになり、新しい商品やビジネスモデルの創造よりも既存のものの最適化を優先するようになる。細分化、専門化、複雑性の増大も加わって、ともすれば新しいアイデアが広がることを妨げてしまう。また、経済的成功が自己満足やリスク回避の姿勢につながり、リーダーは過去の成功を支えたメンタルモデルを問い直すことに慎重になる。
では、どうすれば企業はイマジネーションを取り戻せるのだろうか。ボストン コンサルティング グループ(BCG)ヘンダーソン研究所での筆者らによる研究は、6段階のサイクルによってイマジネーションを体系的に活用できることを示している。すなわちこれは、企業が「イマジネーションマシン」となるための土台になる。
1. 逸脱や例外を歓迎する
あらゆる独創的な取り組みはひらめきから始まる。習慣的な物の見方を放棄したくなるような驚きから刺激を受けることが不可欠だ。それをシステム化するには、新しい思考を触発する新しい情報を積極的に探し求める必要がある。運用化の方法としては、たとえば、全従業員に顧客と接触する機会を与えたり、平均や集計結果とともに興味深い例外について報告させたりすることが考えられる。