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部下から不満を訴えられた時、どう対処すればよいか
エグゼクティブコーチングのクライアントであるポールは、あるミーティングでつらい思いをして、取り乱してガイダンスを求めてきた。通常のプロジェクトレビューだったのだが、部下のエレナが、チームの仕事量に懸念を表明して、ポールを糾弾したというのだ。「半年前、チームの半分以上が解雇された。その時あなたは約束したのに、仕事量を減らしてくれていない。みんな休みなく働いているのに、あなたは気にかけていないようだ」と。
ポールはショックを受けて、どう答えてよいかわからなかったという。以前から、仕事量で困っていれば教えてほしいとチームに声をかけていたが、誰も何も言ってこなかったのだ。しかし、ほかのミーティング出席者のしかめ面を見るかぎり、エレナの気持ちは広く共有されているようだった。ポールは、自分がこの問題をきちんと気にかけていて、事態を改善したいと思っていることをわかってもらうために、ミーティング後に個別に話をできないかとエレナに提案した。しかし、出席者がこぞってあきれた顔をしたところを見ると、誰も彼の言葉を信じていないのは明らかだった。
筆者らがポールに、エレナの不満はどれだけ正当性があるのか尋ねると、人員削減以来、会社の上層部は約束とは裏腹に、仕事を増やし続けているとポールは答えた。「私は異議を唱えようとしたのだが、誰も耳を貸さなかった。そして、それが自分のチームにどのような影響を及ぼしているのか、私が注意を払っていなかったのは明らかだ」
そのような状況になった経緯が何であれ、チームが何かに不満を持つと、自分たちを不幸にしている物事について、責任はリーダーであるあなたに向けられることはよくあるものだ(あなたに事態を変える権限があるかどうかは関係がない)。職場で物事がうまくいっていない時、上司は最も不満の矛先を向けられやすい。なぜなら上司は、自分たちよりも物事を動かす権限があると見なされるからだ。ポールが幸運だったのは、エレナがそれをオープンに話してくれたことだ。そうではなく、パッシブアグレッシブ(受動的攻撃)な行動で不満を示唆するものの、何か問題があるのか直接聞いても無視されるか、「何もかもうまくいっている」と突き放されるケースが無数にある。
チームから責められると、さまざまな不快な感情を抱くのは当然だ。ポールが自己防衛的な感情を抱いたのは無理もない。人員削減を決めたのも彼ではないのだ。責められたリーダーが罪悪感を覚えて、自分の行動や決定がチームの不満につながったのではないかと疑念を抱くこともある。あるいは、困難な決断とその影響を一人で背負い、孤立無援だと感じるかもしれない。筆者らはポールに、そのミーティングで不満が噴出する(しかし彼が見逃していたかもしれない)兆候はなかったか尋ねた。ポールは当初、恥ずかしいという思いが先行して、事態を客観的に振り返るのが難しかった。だが、最終的には多くの点と点をつないで、チーム(特にエレナ)の苦悩が次第に大きくなっていたことが明らかになった。
人間は問題に直面した時、本能的に「犯人」を探そうとする。そして研究によると、ネガティブな結果をもたらしたアクションは、ポジティブな結果をもたらしたアクションよりも、意図的だと思われやすい。これは「根本的な帰属の誤り」によるもので、人間はこのようにして、自分でコントロールできない状況を人のせいにする。当然のことながら、リーダーはほかの従業員よりも失敗について多くの非難を受け、成功した物事については称賛を受けにくい。
こうした心理的現象の罠が意味することは、リーダーであるあなたは、あなたが思っている以上にチームから大きな非難を受ける可能性が高いということだ。
非難された時の脳の状態
チームの期待に応えられなかったと非難された時、それが正当か否かはさておき、あなたの脳は脅威を覚えて、明晰な思考ができなくなり、認知の歪みや防衛行動を引き起こす。まるで犯人かのように扱われて、不合理な認識を抱く可能性もある。感情を刺激される経験をすると、扁桃体が活性化して闘争・逃走反応を示したりするが、誰かから非難されると、脳内ではさらに複雑な反応が生じて、それを乗り越えるのがいちだんと難しくなる。