米経済は順調にソフトランディングに向かっているといえる理由
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サマリー:最近の不安定なマクロ経済指標は、米経済のソフトランディングは無理だと主張する悲観論者を勢いづかせている。しかし、企業幹部は、これらの指標に一喜一憂しないようにする必要がある。米経済の基盤は、景気循環の... もっと見る波を越える強さに根差しており、これらの指標は景気拡大によるものであると認識すべきだ。 閉じる

米経済は悲観論をものともせず、依然として好調

 1年足らず前、多くの悲観論者が、米経済のソフトランディングは無理だと主張していた。米国のレジリエンス(再起力)は、新型コロナウイルスによるパンデミック時代の貯蓄など幸運な要因が重なった結果にすぎず、いずれ底を突くという。ところが、インフレが落ち着き始め、驚くほど力強い成長が示されると、ようやく米経済は彼らが思っていたよりもレジリエンスがあることを認めざるをえなくなった。

 だが、最近の心もとないマクロ経済指標は、悲観論を再び勢いづかせている。2024年1~3月期の物価指数上昇を受け、順調に見えたディスインフレ(物価上昇ペースの鈍化)の道は行き詰まったかのように見える。当初は年内に6回と見られていた利下げは、ひょっとすると1回に留まるという見方が強まっている。株式市場は直近の最高値と比べて軟化している。

 しかし、こうした指標は経済の強さを示しているのであって、弱さを示しているのではない。どれも景気拡大によるものであり、低迷の結果ではない。最近の物価上昇圧力は、消費が著しく力強いせいだ。予想を上回るペースの景気過熱を防ぐためには、金融引き締め政策を時間をかけて行う必要があるため、利下げは回数が減り、従来の予想より時期も遅くなるだろう。株式市場のボラティリティはこうした変化を反映しているが、依然として過去最高水準にあることに変わりはない。好調な企業業績の予想も追い風になっている。

 予想を下回る1~3月期の国内総生産(GDP)も、在庫投資と純輸出の減少(どちらも肝心な内需の強さとは関係のない要因)に牽引されたものであり、景気低迷を示唆するものではない。個人消費、投資、住宅はすべてGDPの成長に寄与した。

消費は依然として強い――そして誤解されている

 ここ数年、繰り広げられている悲観論は、その多くが米国の消費者に対する誤った見方に根差していた。米国の消費者は懐に余裕がなく、パンデミック期の貯蓄を使い果たし、物価上昇による実質賃金の目減りに苦しんでいると見なされることがあまりにも多い。この説によると、需要は人為的に押し上げられているのであって、その崩壊は先送りされているにすぎず、回避できたわけではない。