あなたの上司は有害なポジティブさを発揮していないか
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サマリー:職場が幸せでポジティブであることは、従業員と組織の双方にとって有益なことだ。しかし、上司が有害なポジティブさを発揮している場合はどうなるだろうか。ポジティブな考え方によって適切にチームを導く上司と、有... もっと見る害なポジティブさを持つ上司を区別する方法はあるだろうか。本稿では、従業員が注意すべき3つの危険信号を紹介する。 閉じる

ポジティブな言葉で操作されていないか

「今年の販売予測をあと100万ドル高くしよう」と副社長が興奮気味に言った。チームミーティングで彼は立ち上がり、手を叩いて叫んだ。「私たちにはできる。あなたたちを信じている。やり遂げよう」。彼は会議室を歩き回りながら、メンバーたちの背中を軽く叩き、拳を突き上げた。

 同僚と筆者は信じられない思いで顔を見合わせた。社内のサプライチェーンの責任者から、新製品が生産能力を上回るスピードで売れており、ある工場ではもうその製品を生産することができないと伝えられたばかりだった。副社長はそれをすべて知っていたにもかかわらず、販売予測に100万ドル上乗せするよう強要してきたのだ。どれだけ希望的観測を持ち、前向きに考え、やればできると信じても、この新たな予測目標を達成することはできなかった。

 これは、このリーダーの下で経験した数多くの事例の一つにすぎない。彼は単に楽観的なだけでなく、有害なポジティブさに満ちていた。

 職場が幸せでポジティブであることは、従業員と組織にとって双方にメリットがある。オックスフォード大学サイードビジネススクールの大規模な調査によると、幸せだと感じている従業員は生産性が13%向上するという。『幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論』の著者ショーン・エイカーによれば、感謝と評価に根ざした職場のポジティブさは、創造性を3倍に増加させ、疲労の症状を23%軽減し、売上げを37%増加させるという。さらに、メンタルヘルスとコーチングの大手スタートアップであるベターアップは、ポジティブな考え方は問題解決能力や変化への適応能力を高めるだけでなく、リーダーシップスキルを強化するとしている。

 しかし、上司がポジティブさを武器にしたらどうなるだろうか。

 筆者はこれまでのキャリアの中で、リーダーたちが有害なポジティブさを発揮するのを何度も目にしてきた。状況がどれだけ悪く、ストレスが多く、困難な状況であっても、単にハッピーに振る舞ったり、ポジティブに考えたりすることで結果が変わると自分に言い聞かせ、その有害なポジティブさをチームに拡散する。そうやって根本的な原因に対処することなく、機能不全に陥った環境の中で生き残り、耐え抜く努力をする責任を個人に押しつけるのだ。

 楽観的でポジティブに考え、チームを指導し鼓舞する上司と、有害なポジティブさを発揮する上司をどうやって見分けることができるだろうか。以下は注意すべき3つの危険信号だ。

周囲を「イエスマン」で固めている

「ノーとは言わせない」と、筆者が以前一緒に働いていたある営業リーダーはいつもそう言っていた。「ノーという選択肢はない」。彼は常にイエスマンに囲まれていた。筋の通らない提案や指示に対して、異議を唱えたり、疑問を投げかけたりしない人々だ。筆者が彼らと働いていた間、このチームは常に行きすぎた約束をし、実際には約束を果たせなかった。この営業リーダーはチームに有害なポジティブさを感染させていた。彼らは現実的なビジネスの障害に直面しても、どのようなことも可能だと信じこんでいた。実際には、現実から目をそらしていたのだ。