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成し遂げなければならないことが多すぎる
自分の目標を振り返ってみてほしい。仕事を高い水準で遂行する、パートナーや友人、子どもと過ごす、運動する、マインドフルネスの時間を見つける、正しい食事を摂るなど、大小さまざまな目標があることだろう。複数の目標がせめぎ合っていることもよくある。先に挙げた目標すべてがあなた自身の限られた時間とリソースを奪い合う。
ワークライフバランスに関する実践的なアドバイスでは、優先順位をつけることが重視されがちである。よく使われるのが「人生というビンに石を入れる」というたとえで、大きな石(最も大切な目標)を最初に入れなければ、小さな石(それほど重要でない目標)にスペースを取られてしまうというものだ。
しかし、このたとえには欠点がある。著述家のオリバー・バークマンが指摘するように、大きな石がすべてビンに入るとは限らない。「最大の問題は(中略)重要なことが多すぎることだ。仕事を続け、家賃を払い、親らしくあり、ささやかな充足感を得るなど、成し遂げなければならないことが多すぎる」とバークマンは述べる。「言い換えれば、石が多すぎるのだ。そしてその多くは、ビンの近くに置かれることさえない」
人生というビンをめぐるたとえには、より根本的な欠陥がある。目標は石ではないという点だ。目標とはむしろ柔らかい粘土のかたまりであり、優先順位をつけるのと同じくらい重要なのが自分で成形することである。本稿では、時間をかけて目標を形づくり、よりよく達成するための研究に基づいた戦略を概説する。最初のステップでは、各目標の根底にあるのがどの価値観かを明らかにする。次に、それぞれの価値観について、成功の定義を明確にする。第3のステップでは、それぞれの定義を評価する。最後に、自分の状況やいまの自分にとって最も重要な事柄に基づき、価値観を形づくる。
時間の経過とともに目標を再構築する方法
目標を支える価値観を特定する
本当に大切なことを知るためには、具体的な目標だけでなく、重要でハイレベルな目標である「価値観」に焦点を当てよう。たとえば、マラソンを完走するという目標は、健康や困難なことの達成といった価値観を満たすだろう。子どものサッカーチームのコーチをすることは目標であり、よい親であることは価値である。30歳までに昇進することは目標であり、充実した仕事をすることは価値である、といった具合だ。
良い人生の本質をどう考えるにせよ、価値観は重要だ。筆者らは研究により、価値観を絶対的な中心に据える理論に達した。この「価値観充足理論」は、哲学の分野で長年親しまれてきた理論を実証的にアップデートしたもので、それによると、充実した人生とは自分の重要な価値観を充足させる、あるいは維持することであると説く。そこで、そうした良き人生を送るために、まず「自分はどのような価値観を大切に思っているのか」と自問しよう。
何から始めたらよいのかわからない場合は、自分の価値観を特定し、明確にするための優れた方法が数多くある。その一つが、好みの方法でリラックスして人生を振り返り、最高の気分だった時間を思い出すことだ。その時に何をしていて、誰と一緒にいたのか。たとえば、そうした時はいつもレースに出場していたなら、競争はあなたにとって価値のあることかもしれない。仕事に取り組む時間と子どもと過ごす時間とが同じくらい幸せな気持ちをもたらすなら、あなたは仕事と家庭、そしてそのバランスを大切にしているのかもしれない。