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CEOの任期を「3幕構成の演劇」と考える
新任のCEOに8年後や10年後に退任する際のスピーチを想像してもらうと、自分の実績の説明に驚くほど力を入れる。大半の人は、自分が企業価値を倍増させているだろうと語り出す。文化を改善し、強力な人材のパイプラインを構築して、有能な後継者を選ぶ手助けをした、と。
しかし、それと同じくらい印象的なのは、彼らがそうした成果を想像することはできても、そこに至る道のりに対する意識がほとんどないことだ。多くの人が自分の仕事を短距離走のように表現する──やるべきことだらけの毎日が目まぐるしく過ぎていく、容赦のないレースだ。
現実には、CEOの任期はむしろマラソンに似ている。すべての長距離走と同じように、戦略的かつ意図的にアプローチして、ペースや目的が異なる個別のフェーズに分けて計画を立てる人ほど、CEOの任務をみごとに完走できる傾向がある。
ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の「新任CEOワークショップ」に参加したCEO数百人を対象にした筆者の研究によると、CEOの在任期間を、3幕構成の演劇によって描かれる物語だと考えると効果的であることがわかった。
・第1幕:主導権を握り、正統性を確立し、新しい指揮官になることから生まれる機会を活用する。
・第2幕:第1幕の結果をもとに組織を再調整して活力を取り戻す。
・第3幕:引き継ぎの準備をしながら、会社がより長期的な成功を収められる状況を確保する。
CEOが短期的な成果に対して途方もなく大きな重圧を受ける時代に、新任のリーダーが10年以上の在任期間を想定して計画を立てるのは、賢明ではないと思うかもしれない。しかし実際に、このような長期的志向は好循環と自己強化のダイナミズムをもたらす。
3幕のそれぞれに明確な意図を持って取り組むCEOは、早い段階で勝利を収めて正統性を構築しやすくなり、任期を通じて成功する可能性が高くなる。
第1幕:主導権を握る
CEOは大きな興奮を胸に新しい任務に就く。CEOの職を得ることはキャリア達成の頂点であり、変化をもたらす機会である。とはいえ、待ち受けているものに対して緊張感もあり、自分がその困難に立ち向かえることを願っている。