あなたの組織の変革は計画から脱線していないか
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サマリー:組織変革の多くは、成功したケースであっても、途中で脱線し、リーダーの介入を必要としている。筆者らは、こうしたリーダーの介入措置のことを「ターニングポイント」と呼び、これを見極めて必要な行動を起こすには... もっと見るどうすればよいのかを研究してきた。ターニングポイントを乗り越えるカギは、チームの感情エネルギーの変化に注目し、その背景にある問題を掘り下げることにあるという。 閉じる

組織変革はリーダーの介入が欠かせない

 ほとんどの組織変革は、最終的に成功したケースであっても、途中で脱線して、リーダーの介入を必要とする瞬間がある。筆者らは組織改革の研究者として、企業の経営幹部から相談を受けることも多い。「うまくいかなくなった時はどうすればよいのか」「本来の計画から脱線していることを察知するにはどうすればよいのか」「この重要な機会を、私のプラスにするにはどうすればよいのか」といった質問を投げかけられるのだ。

 こうした介入措置、つまり変革が脱線した時にリーダーが軌道修正を図ることを「ターニングポイント」と筆者らは呼んでいる。変革におけるターニングポイントを見極めて、必要な行動を起こすにはどうすればよいのか。こうした疑問が筆者らの新たな研究の出発点となった。

 その結果、まず驚いたのは、ターニングポイントが至るところに存在することだった。変革に関与するシニアリーダー846人と従業員840人を調査したところ、変革の96%が計画全体を脱線させかねない重大な問題に直面し、経営幹部の介入が余儀なくされたことがわかった。

 ターニングポイントは、外因性のショック(インフレ、サプライチェーンの混乱、政治的な出来事など)や事業モデルの問題点(技術やガバナンスやアプローチを変える必要性など)、人的ダイナミクス(従業員の信頼や当事者意識)を受けて生じることもある。

 ただ、ターニングポイントがどこにでもあることは、それほど驚くべき点ではないのかもしれない。結局のところ、変革がスタートした時、その組織は古い事業モデルと、まだ着手していない新しい事業モデルの間にある。したがって、変革が直線的なプロセスになることはまずない。

 一方、不安定な現代の世界で、組織は一つ以上の外的なショック、たとえばパンデミック、サプライチェーンの混乱、ハイパーインフレーション、金利上昇、地政学的な不透明性などに見舞われる可能性が非常に高い。実際、このすべてが過去5年間に起きた。

 ターニングポイントが発生する背景には、こうした社内外の情勢があり、調査対象となった経営幹部の80%は、ターニングポイントをどう切り抜けるか(そしてどれだけ早期に介入するか)によって、変革そのものが停滞し続けるか、それともパフォーマンスが加速して改善に向かうかが決まると考えていた。実際、筆者らの調査では、ターニングポイントをうまく切り抜けると、KPI(重要業績評価指標)を上回る可能性が1.9倍上昇することがわかった。

チームの感情エネルギーの理解がターニングポイントを切り抜ける重要なカギ

 筆者らは、感情の旅としての変革に注目してきた。感情(とりわけネガティブな感情)は、変革が脱線していることを最も早い段階で示唆する指標であり、どのような問題が起こっているのかについて、リーダーにインサイトをもたらす。たとえば、新しいシステムでは顧客に十分なサービスを提供できない、と現場のスタッフが不満を感じているといったことだ。