CEOと取締役会議長の関係を左右する5つの局面
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サマリー:米国では取締役会議長とCEOの役割分離が浸透し、取締役会の独立性向上が期待されている。しかし、この分離はリスクも伴い、両者の関係が悪化すると取締役会や経営陣に悪影響が及ぶ可能性がある。筆者らは調査を通じ... もっと見る、両者の効果的な関係のカギは信頼であることを明らかにした。また、これが透明性や共感、ロジックに基づいて築かれると結論づけている。本稿ではこの信頼関係の構築に重要な5つの局面について解説する。 閉じる

信頼はオーセンティシティ、共感、ロジックの上に築かれる

 過去10年の間に米国ではますます多くの取締役会が、欧州の取締役会に倣い、議長とCEOの役割を分離するようになった。現在ではS&P500企業の約60%が分離を実施しており、39%は社外の独立した取締役会議長を選任している。筆者らが定義する独立社外取締役とは、ニューヨーク証券取引所やナスダックが定める独立性に関する規則を満たす取締役である。

 多くの株主はこの傾向を称賛し、分離は取締役会の独立性を高め、より効果的な監督につながると主張している。

 しかし、このアプローチはリスクと無縁ではない。

 組織における2つの最も有力なリーダーシップの役割を分離することで、「取締役会議長とCEOの関係」という重要なダイナミクスが新たに生まれる。悪い関係は取締役会のパフォーマンスに影響を及ぼしかねず、それが経営陣にも波及するかもしれない。とはいえ親密になりすぎれば、取締役会の独立性、客観性、株主の代理として行動する能力が妨げられる。適切な関係を保つには、デリケートかつ極めて個人的なバランスが求められるのだ。

 では、議長とCEOの効果的な関係を特徴づけるものは何だろうか。

 それは役割の明確性や、事業に関する議長の知識や、助言の質ではない。目標の一致やパフォーマンスの測定、取締役会のプロセスでもない。

 これらも重要ではある。しかし筆者らは、議長とCEOの効果的な関係を促進する決定的に重要な要因が信頼であることを突き止めた。これは筆者ら自身の経験、多数のCEOおよび議長との対話、そしてS&P500企業の取締役約200人、CEO約30人への調査に基づく結果である。

 信頼はオーセンティシティ(自分らしさ)、共感、ロジックの上に築かれる。議長とCEOは自身の期待と課題について、弱さを見せることを恐れずに胸襟を開き、透明性を保つことで、徐々に信頼を築いていくことを筆者らは発見した。加えて、両者間の信頼を築く──または壊す──ことにつながる、5つの重大な局面も特定した。