専門家570人が予測する「仕事の未来」年表
Andriy Onufriyenko/Getty Images
サマリー:仕事の未来に対する予測が正しいのは、楽観主義者か、懐疑主義者か、悲観主義者か。筆者らは、この疑問に答えるために、世界の専門家が仕事の未来を予測した新聞記事を分析し、仕事の未来に関する議論を支配している... もっと見るのはテック起業家、経済学教授、ベストセラー作家や一流ジャーナリストの3つのグループであることを発見した。さらに、専門家570人に予測された仕事の未来の実現可能性をランク付けしてもらい、彼らの予測を平均化して一つの「仕事の未来」の予測年表を作成した。 閉じる

仕事の未来に関するシナリオへの異なる見解

 仕事の未来については、誰のシナリオが正しいのだろうか。

「テクノロジーは、月面着陸、PC、スマートフォン、そして言うまでもなく屋内水道や洗濯機をもたらした」と楽観主義者は言うかもしれない。「進歩を止めたいなんてことがあるだろうか。止めたり規制したりするのではなく、加速させるべきだ。AIとロボット工学は、私たちをポスト欠乏の時代へと導き、すべての人をより豊かにし、面倒な仕事を代行してくれる」

「先走るのはやめよう」と懐疑論者は答える。「新聞は50年前から、ロボットが私たちの仕事を奪うと主張してきた。これまでにそれは起きていないし、これからもそうだろう。しかし、AIのような新しいテクノロジーは、生産性と効率性を向上させ、経済成長と人々のための新しくよりよい仕事をもたらす」

 悲観論者はこう反論する。「慌ててはいけない。今回は本当に違う。過去の産業革命はたしかに技術的進歩をもたらしたが、同時に当時の労働者の仕事と生活の環境に劇的な影響を及ぼし、それが何十年も続いたことを忘れてはならない。大企業が自動化を人件費削減のチャンスと捉えないわけがない。ロボットやアルゴリズムが休憩なしで昼夜を問わず働き、不平を言わず、病気になることもないのだから。必要なのは経済成長ではなく、脱成長だ」

 正しいのは楽観主義者か、懐疑主義者か、悲観主義者か。そして、あなたはどのシナリオを信じるだろうか。

仕事の未来に関する考え方の分類

 上記の2つの疑問が、筆者らの最近の研究の焦点だ。この2つの問いに答えるため、まず過去5年間のベルギーの新聞記事485件の中から、世界の専門家が仕事の未来について予測したものを抽出した。この新聞分析に基づき、メディアにおける仕事の未来に関する議論を明らかに支配しているのは、次の3つのグループであることを発見した。

 テック起業家(イーロン・マスクなど)、経済学教授(マサチューセッツ工科大学のデイビッド・オーターなど)、ベストセラー作家や一流ジャーナリスト(デイビッド・フレインと彼の著書The Refusal of Work[未訳]など)だ。仕事の未来の予測について、同じグループの専門家の間では意見が大きく一致していたが、各グループ間では隔たりがあった(驚いたことに、政策立案者、政治家、労働組合の代表者、人事マネジャーは、これらの記事にはほとんど登場していなかった)。

 次に、筆者らの個人的なネットワークと、ベルギーのCEOやジャーナリストのための大規模なメーリングリストの両方から、テクノロジー、経済、著述・ジャーナリズムの専門家570人を特定した。そして、メディアで展開された競合する予測に基づき、仕事の未来についてのシナリオ(冒頭のものと似ているが、より詳細である)をつくり、それぞれの予測の可能性を評価するよう専門家たちに依頼した。回答した専門家は全員が一貫して、メディアで「自分たち」のグループが推すシナリオの可能性が高いと考えた。